「中堅」首相は、政治家たちの嫉妬にもご用心

「中堅」首相は、政治家たちの嫉妬にもご用心

塩田潮

 内閣等の人事も終わり、新政権の輪郭が見えてきた。

 大震災から半年という時期に登場した野田首相は、前内閣末期の「空転政治」のツケもあって、課題は山積みである。遅れている復旧・復興対策、原発事故の収束と除染などの対策、加えて超円高、未解決の普天間やTPP(環太平洋経済連携協定)の問題もある。懸案の消費税増税問題、その前に行政の無駄の根絶にも取り組む必要がある。衆参ねじれの壁にも挑まなければならない。

 最大の関心は野田首相が政治指導者としてこの困難と苦難を克服する資質と条件を備えているかどうかだ。

 54歳、当選5回、議員歴はわずか14年余、党首経験なし、閣僚は財務相だけである。政界の通念に従えば中堅議員にすぎない野田首相にここで出番が回ってきたのは、一つは「非トロイカ」というキャラクターだったからだろう。鳩山、菅、小沢の3氏とは違って、苦労人で庶民派、地味で人気は薄いが、重心が低くて慎重派、夢追い型でなく現実主義、攻撃型や牽引型とは別の調和型、剛腕型と違って総合力活用型である。

 ここまでの言動から、政治の姿勢と手法は「泥臭く汗をかく『どじょう』の政治」「ぶれない、うそをつかない」「低姿勢」、路線と政策は「党内融和」「チームワーク重視」「実行する政治」「一貫して非自民・保守」「強固な日米関係」といった姿が浮かび上がる。

 だが、「泥臭く汗をかく」だけでは不人気に、「ぶれない」は増税一直線に、「低姿勢」は八方美人に、「党内融和」は小沢元代表への過剰配慮に、「チームワーク重視」は党高政低に、「実行する政治」は財務省依存と官僚支配に、という危険性を抱える。

 熟慮型らしく、まず手堅い人事を行い、世論調査などで高評価を得たが、「私は細川チルドレン」と語る野田首相に、師匠の細川元首相はあえて「欲張らずに『一内閣一仕事』で」という言葉を贈っている。これから未体験ゾーンの国際競争や権力闘争の戦場で、最高指導者に求められるのは、広い視野に立った複眼思考、孤独の中での決断力である。

 それともう一つ、「中堅」の野田首相は、政治家たちの嫉妬という見えない敵にもご用心を。
(写真:梅谷秀司)
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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