【産業天気図・石油】原油の在庫評価益で利益が大きくブレる。今期は実質増益だが…

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石油精製・販売の今期の空模様は「曇り」が続きそうだ。石油精製・販売は原油の価格変動の影響を受ける。というのも、原油が上昇すると、在庫評価で総平均法を採用している元売り(新日本石油<5001.東証>、昭和シェル石油<5002.東証>、コスモ石油<5007.東証>、新日鉱ホールディングス<5016.東証>=ジャパン・エナジーなど)では、在庫評価益が発生。一方、在庫評価で後入れ先出し法を採用している出光興産<非上場>、東燃ゼネラル石油<5012.東証>は在庫評価益が少なく出る。
 前05年度は各社、原油高騰で膨大な在庫評価益が出た。最大手の新日本石油は営業利益3039億円の約半分1664億円を原油の在庫評価益が占めた。今06年度の予想営業利益は1150億円だから約3分の1に減るが、これは原油の在庫評価損益が260億円のマイナスに転じると見ているためだ。原油在庫評価損益を除いた“真水”の営業利益は前期が1375億円、今期が1410億円となる。つまり、企業会計上の利益は大幅減益ながら、実質は逆に若干の増益という複雑な姿になっている。
 どう評価すればよいのか。まず、原油在庫評価損益は捨象すべきだろう。そういう観点に立てば、今期は原油高騰で各社とも海外での油・ガス開発利益が膨らみ、第2の柱になっている石油化学部門が堅調に推移していること、さらに原油高騰に伴う価格転嫁が進むことから、利益の実勢は強いと言える。ただ、原油高騰分の価格転嫁が十分ではないことや、原油高騰で自社の精製費も上がるといったマイナス要因も多い。
 したがって、グズついた天気が続きそうだ。ただ、株価は原油高騰を好感して上がる性質があり、「真水の利益」をあまり考慮していない模様だ。
【内田通夫記者】


(株)東洋経済新報社 会社四季報速報プラス編集部

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