言論の領域が狭まれば日本も「北朝鮮」になる 漫画家小林よしのり氏が「言論の自由」を語る

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むしろ腹立つのは産経新聞で、本当にこいつら新聞の役割を全然わかってない。権力に追従するふざけた奴らだ。「自民党の広報誌」とちゃんと書けよと言いたくなるようなひどい新聞。だから、今の状態だったら、「産経新聞、潰してしまえ」と言いたくなるよ。でも、それは言えない。産経新聞も必要だからしょうがないわけですよ。公的領域はなるべく広く持っておかないといけない。

――自身の意見と異なるメディアにも触れているのか。

むしろワシの主張と対立する主張を一生懸命に読むんですよ。説得されちゃうような何かがあるのだろうかと。なんで、それにみんなが共感しているのかと、一生懸命読むのよ。そうすると、「ここ違う。ウソ言ってるじゃん」となるわけです。

中には、説得されちゃうものもあるんですよ。ぜんぜん違うと思っていても、読むと「うーん、やっぱり、こりゃあ、ワシの考え方、間違っていたのかな」と思うものもあるんですよ。

共同体が崩壊して、誰からも教わらなくなった

たとえば、以前はほんとにゲイとかレズとかも、すべて嫌いだと思っていて、同性婚も許したらダメだと思ってたけど、最近はその考えが変わってきた。財産を相続できないとか、病院で面会させてくれないとか、確かにこれは不都合ありそうだなと。

慰安婦問題でも、昔は慰安婦を「奴隷」というのはおかしいと思っていたけど、明治時代の政治家の中にも、奴隷扱いされていた娼婦を解放しようとする動きがあったりとか、そういう過去を学ぶと、「問題ない」とは言えないという気持ちも芽生えた。

――やはり異なる意見に触れることが大切だということか。

右も左もそうだよ。左も左で、自分がこのポジションだと決めたら、自分のポジションに利する言論しか耳に入ってこないんだよ。相手はなぜそう主張しているのかを考えることができなくなる。ものを考えることよりも、自分のポジションでものを言うことに正義を感じてしまうわけ。

プライドがやっぱりあるんだろうね。意見を変えたら、自分のアイデンティティが崩壊すると思ってるんじゃないの。でも気がついたら意見を変えてもいいんだよ。

右の側も、歴史を知らなくて、バランス感覚がない。だから、全然、保守じゃない。勉強しなきゃいけないんだけれども、彼らは勉強してない。

これまでは、共同体が存続していたので、自分のおじいちゃんやおばあちゃんを通じて、ご先祖様の考え方がずっとつながっていたんです。けれども、今はそういうものが断絶しちゃった。しかも近所、あるいは会社、地域すべての共同体が崩壊したから、まったく個人として取り残されている。誰からも教わってないのよ。

そうするとまったくの個として、砂粒の個が放り出されているだけの状態になってしまう。ある意味、振る舞いみたいなものを見せる先輩がいないわけ。そこにネットの情報だけが入ってきて、それが勉強ということになってしまっているんでしょう。

※ 小林よしのり氏インタビュー(上)はこちら

 

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