対話の現場/言葉の意味を共有して対話的協働を実現する

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ここで注意すべきは、対話において必要なのは、「意味」について合意形成すること。どちらかの「正しさ」を証明することではない。

もちろん、「正しさ」がいっさい無用ということではない。合意形成する過程で、たとえば科学的な定義を参考にすることはあるだろう。だが、対話において必要なのは、あくまでも「合意形成された意味」であって、(何らかの外部規準に基づく)「正しい意味」ではないのである。

これは対話的態度の基本でもある。「正しい言葉を正しく使って、文法的に正しく話せば、誰にでも通じるはずだ。自分の言葉を理解できないとすると、それは相手が悪いのだ」という態度では、「独白(モノローグ/独り言)」はできるが、「対話(ダイアローグ)」はできない。極端な事例だと思うかもしれないが、これに近い態度を取る人はけっこういるものである。

まずは「わたし」と「あなた」の間に「意味」を成り立たせること。これが対話の出発点である。

意味の共有なくして協働は成り立たない

「わたし」と「あなた」の間に「意味」を成り立たせないことに、意義を見いだす場合もある。たとえば相手に言質を取られたくない場合、意図的にあいまいな言葉を使うのである。いつでも「言葉の意味のブレ」に逃げ込めるようにするためだ。

これは政治家や官僚の常套手段である。最近では「一定のメド」という、あいまいさという点に関しては秀逸な言葉が有名になった。

意図的にあいまいな言葉を使う場合、その部分に関しては、対話する意思のないことを示している。強引に意味を引き出して言質を取ったところで、必ずしも解決には結び付かないことが多い。そもそも「言質を取る」という発想自体が、あまり対話的ではないのである。

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