野村ホールディングスは米連邦住宅金融局の提訴で新たな不透明要因が追加、世界的な金融不安も懸念材料

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野村ホールディングスは米連邦住宅金融局の提訴で新たな不透明要因が追加、世界的な金融不安も懸念材料

業績停滞が続く野村ホールディングスに新たな不透明要因が加わった。米連邦住宅金融局(FHFA)が9月2日、野村を含む17の金融機関を相手取り、住宅ローン証券販売での損害賠償を求めて提訴したためだ。

FHFAの声明や訴状によると、17の金融機関は住宅バブル当時、FHFAの監督下にある住宅公社(GSE)のファニーメイとフレディマックに対し、リスクを正確に説明することなしにサブプライム住宅ローンを組み込んだ証券化商品を販売したのは証券取引法などに違反するとして、販売総額1960億ドルに及ぶ取引の無効と損害賠償を求めている。

このうち野村は、2005年11月から07年4月にかけて現地子会社を通じ「20億ドル(約1500億円)以上」の住宅ローン担保証券(MBS)を販売したとしており、これらの販売の無効と損害賠償(弁護士料や金利などを含む)を要求されている。

野村の販売額は他の被告金融機関に比べれば少ないほう。多いところではバンク・オブ・アメリカ(子会社のカントリーワイド、メリルリンチを含む)の574億ドル、JPモルガン・チェースの330億ドル、英RBSの304億ドル、ドイツ銀行の142億ドル、クレディ・スイスの141億ドルなどケタが違う。また、販売額のうち損失額は1~3割程度にとどまるとの見方もある。20億ドル程度という野村の販売額を考えると、たとえ全面敗訴となっても、経営を一気に揺るがすほどの規模ではないだろう。

米国ではこれまでも、いわゆる「レプワラ問題」(借り手との契約時点で手続き上不備のあった住宅ローンやその住宅ローンから組成されたMBSの買い戻し問題)で多くの大手銀行が投資家に訴えられ、多額の損失を計上している。特にバンカメはカントリーワイドやメリルリンチを救済合併したこともあって影響が大きく、10年10~12月期と11年4~6月期にそれぞれ71億ドル、165億ドルの関連損失を計上し、最終赤字となっている。

今回の訴訟は、「MBS販売の際の売り手の説明を巡っての問題であり、レプワラ問題の場合と比較すれば売り手側の過失は小さい」(大手証券クレジットアナリスト)との見方もあるが、大手銀行には大きな追加的リスク要因であることは間違いない。バンカメの株価は年初の半値水準まで暴落している。

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