円高で業績には根強い下押し圧力、トヨタ自動車であれば2000億円超の利益が吹っ飛ぶことに--『会社四季報』定期調査

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8月19日、円はNY外国為替市場で一時1ドル=75円95銭という史上最高値をつけた。円高というより米国の財政問題、経済の弱さに起因するドル安だが、それは欧州とて同じ。ギリシャなどの債務問題を抱え、ユーロ安傾向が続く。

そのような“円高”傾向を受け、『会社四季報』11年4集秋号ワイド版では、上場企業3596社を対象に、ドル、ユーロそれぞれの期初想定の為替レート、1円円高に振れた際の営業利益に対する影響について調査を実施した。有効回答率はドルが19・9%、ユーロが10・5%だった。

企業は期初平均想定レートを82円14銭とみているが、8月末の実勢ドル円レートは76円70銭台と、6円近くも円高に振れている。一方、ユーロの平均想定レートは113円05銭。8月末のユーロの実勢も110円80銭台となっており、想定レートとは3円の開きがある。

円高の営業利益へのマイナス影響が大きいのは、相変わらず自動車業界。1円円高の影響はドル、ユーロ合わせ、トヨタ自動車で400億円(ドル340億円、ユーロ60億円)、日産自動車で200億円(ドルのみ回答)、ホンダで160億円(ドル150億円、ユーロ10億円)と、上位を独占する。

電機メーカーへの影響も見過ごせない。たとえばソニー。ユーロが1円円高に振れると通期で60億円(ドルは未回答)、東芝も同じくユーロ1円円高で通期30億円(同)の利益が下押しされる。キヤノンはユーロ1円円高で下期だけで30億円(ドルも同じく30億円)の減益要因となる。

ただ、ユーロの場合、想定レートの最頻値は110円。足元では増益に作用している会社も多いはずだ。

バーナンキFRB議長は金融政策に時間軸効果を採っている。日本では野田佳彦・新首相の誕生で、景気回復より財政再建寄りの政策が採られそうだ。仮に財政再建が進捗すれば、円高要因が増えることになる。さらに景気が停滞すれば金融緩和が継続され、日米金利差の拡大は遠のく。円高局面の転換も先となりそうだ。

なお、『会社四季報』11年4集秋号ワイド版では、各社のドル円、ユーロ円の想定レートおよび1円円高に振れた場合の感応度をリストアップして掲載しているので、こちらもご参照いただきたい。


(『会社四季報』編集部)

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