西澤俊夫・東京電力社長--民間が原発のリスクをすべて負うのは無理だ、賠償含めば原発は超高コスト

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 今回のように「万々が一」が起きた場合、民間として不可抗力であれば、別の形で国が見る、ということをもう少しはっきり作っておくということはあるのではないか。
賠償金を払い続けるだけの会社にはならない

--当面、利益を出すには電気料金の値上げ以外に方策がないという見方もあります。

値上げうんぬんの前にまず自ら血を流さなければ。合理化をしっかりやり、その結果を見てということはありうるかも知れないが、今はとても自ら言及できる立場にはない。

--10年後の東電は「事故前」とは変わった会社になっていますか。

今は事故の収束が先だが、多くのハードルを乗り越えた先にどういう姿があるのか、との思いはある。われわれのコアビジネスは電気を作り、それをネットワークで運んでお客様にお届けすること。今後はそこにいろいろな付加価値やサービスをつけていくことが考えられる。

たとえばスマートグリッドやスマートメーターなども活用し、いろいろなサービスメニューを作る。それで電気を賢く使える形を提供する、というのがこれからの形だと思っている。

スマートグリッドなどの議論は始まっており、準備をしていかざるをえない。必要な投資は何かを削ってでも実施したい。手をこまぬいて待っていたら取り残されてしまう。

--東京電力はただ賠償金を払っていくだけの会社にならない、と。

それはそのとおり。それだけでは何のために会社があるのか、という話になる。賠償は当然しなければいけないが、それだけが目的ではモチベーションも上がらない。企業が生き生きとするには、それ以外のことも目指さなければならない。

今は目の前の危機を乗り越えることに全精力を注ぐが、これを乗り越えられれば、より強靱で筋肉質な東京電力になれると考えている。

にしざわ・としお
京都大学経済学部卒。1970年東電に入社。中核といわれる企画部の在籍が長く、2006年執行役員企画部長に就任。08年常務取締役、11年6月から現職。60歳。

(撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2011年9月10日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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