邦銀の格付けはますます政府債務格付けによる制約が強まる《ムーディーズの業界分析》

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日本国債の格下げに伴い、多数の邦銀を格下げ

ムーディーズは8月24日、三菱東京UFJ銀行および三井住友銀行を含むほとんどの邦銀を格下げし、一部の地方銀行の格付けを据え置いたことを公表した。本邦法令上の格付け付与日は8月24日である。平均の格下げ幅は1ノッチである。

また、みずほコーポレート銀行およびみずほ銀行を含む、みずほフィナンシャルグループの傘下行をAa3からA1に格下げし、同時に同格付けを引き下げ方向で見直しの対象とした。今回の格下げは、ムーディーズが日本国債をAa2からAa3に格下げし、見通しを安定的としたことを受けたものである。

格付け理由

この格下げは、主に日本政府(サポート提供者)の格下げ、およびストレス状況下における政府から銀行システムに対するサポートについてのムーディーズの想定が低下したことを反映している。

すなわち、今回の格付けアクションには、(1)政府から銀行システムへのサポート提供の強い意志は保持されているものの、将来的な危機時においての政府のサポート提供能力が低下しているとの懸念、および、(2)極度のストレス状況下において、当局がシステム上重要な銀行を優先して、支援提供の対象を選別する可能性が高まるであろうというムーディーズの想定を反映している。

日本政府の格下げ、および銀行システムに対するサポートの想定の低下を織り込んだ結果、三菱東京UFJ 銀行および三井住友銀行を含む、ほとんどの銀行を格下げした。

みずほフィナンシャルグループ(以下、「みずほ」)傘下の銀行の格付けは、引き続き引き下げ方向での見直しの対象とされた。銀行システムに対するサポートの想定の低下を踏まえれば、みずほの格付けはさらに引き下げられることとなるが、格付けの見直しにおいて、ムーディーズはみずほ単独の信用力の改善がサポートの想定の低下をどの程度相殺しうるのかを検討する。その結果、ムーディーズはみずほに対する現在の格付けを据え置く可能性もありうると見ている。

政府サポートを提供される可能性が低下したものの、単独の信用力の強さにより、ごく一部の地方銀行の格付けは据え置かれた。

信金中央金庫および新生銀行の格付けの見通しはネガティブであるが、これはそれぞれの金融機関単独の信用力に下方圧力がかかっていることを反映している。

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