息を吹き返す東京電力、電気料金値上げも浮上、貧乏くじを引く原発事故被害者と利用者

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 一方、賠償金支払い以外の運転資金は別途調達しなければならないが、機構法では政府が金融機関に対して2兆円まで政府保証を付けることも決まった。破綻リスクがあった東電への追加融資には消極的だった金融機関も、政府保証があれば話は別だ。

交付金と政府保証で合わせて4兆円に上る資金を得たことで、東電の経営の見通しはがぜん明るくなったのである。

東電に関心薄い政府 消えた解体論

さらに注目すべきは、6月の閣議決定時から新たに加えられた「原子力賠償法」の見直しだ。現状の法律では、原子力事業者に対して無限責任を課すことになっているが、今回の原発事故を機に国の責任を問う声が強まっていた。そこで今回、1年以内をメドに、事故の際の事業者と国の責任をあらためて見直す。

そこで取りざたされているのが、東電の賠償負担に上限が設置されるかどうかだ。東電は今後、「特別負担金」という形で毎年、機構に対して返済を行っていくことになるが、「少なく見積もっても15兆円」(政府関係者)とさえいわれる賠償額を東電だけで賄うことになれば、返済期間が長期に及ぶことは想像にかたくない。

米プライス・アンダーソン法のように、先進国の多くは原発事故時の原子力事業者の賠償負担上限を定めており、「上限がないのは日本、ドイツ、スイスくらい。そのうち、ドイツは原発をやめると決めている」(みずほ証券シニアクレジットアナリストの寺澤聡子氏)。東電の西澤社長は「今回の賠償については現在の法の中でやることになる」としているが、仮に上限制度が適用されることになれば、東電にとってこれ以上ありがたいことはない。

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