原発事故で困窮する福島県の企業、「このままでは力尽きる」--深刻な風評被害の実態

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 「現在こそ、避難者の受け入れによって雇用や給与水準を維持できているものの、今後、仮設住宅への入居とともに稼働率の大幅な低下を余儀なくされそうだ。お盆休みまでは一般客を含めてフル稼働を保ってきたが、それ以降はかなりの空室が避けられない状況だ」(深田社長)。

「大熊町の住民がいなくなったら、廃業するホテル・旅館が出てくる」。すでに東山温泉ではこんな話がささやかれている。深田社長は「売り上げが2割減程度ならば何とかなる。ただ、3割減るとアルバイト社員の雇用問題に発展しかねない。さらに減るともっと大規模なリストラが必要になる」と話す。

ただ、「私の見込みでは3割減は想定範囲内。最悪では5割減を覚悟しないといけない。それでも今よりも一般宿泊客が増えることが前提だ」(深田社長)。

集客を伴う業種では、自動車教習所の受けた被害も甚大だ。福島県指定自動車教習所協会の石橋次男専務理事によれば、10年の県内教習所入所者3万7987人のうち、合宿生は1万0463人を占めた。だが、合宿生入所者は今年3月以降、5割から8割減の月が続き、回復の見込みが立っていない。7月の合宿生入所者も、前年同月比5割強減少した。

南会津町の田島ドライビングスクールでは、年間の入所者の8割弱を合宿生が占めている。ところが、合宿生は震災・原発事故直後から激減。3月11日時点で入っていた予約のほとんどがキャンセルとなった。

同ドライビングスクールの1階フロアには、原発と教習所の位置が書き込まれた大きな福島県の地図と、毎日の放射線量の値が張り出されている。数値を指差しながら、星千津子社長は「放射線量の数値も東京とほとんど変わらないのに、何でこんな目に遭わなければいけないのか」とため息をついた。

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