【バーナンキFRB議長のジャクソンホール講演・専門家に聞く】デフレ懸念なく、追加の金融緩和措置の可能性低い

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バーナンキFRB(連邦準備制度理事会)議長は8月26日、ワイオミング州ジャクソンホールで開催中のカンザスシティ連邦準備銀行主催のシンポジウムで講演を行った。今年8月の金融市場の混乱を受けて、QE3(量的緩和第3弾)への言及があるかどうかが焦点となっていた。しかし、今回は具体的な言及はなく、8月のFOMCで提示したFRBがとりうる追加緩和策について、9月20日のFOMC(連邦公開市場委員会)を21日までの2日間に延長して、より十分に議論するとした。三菱東京UFJ銀行の岩岡聰樹チーフ・エコノミスト(ニューヨーク駐在)に話を聞いた。

--追加緩和策に言及しなかった理由をどう見ますか。

バーナンキ議長は、FOMCの景気の見通しについて、今年前半のGDPショックから、景気は減速しており、短期では下方修正した、と述べた。一方で、中長期では回復に向かっていると楽観的な見方を強調している。欧州での財政・金融市場の危機、米国の債務上限引き上げを巡る混乱、米国債の格下げ、これらによる株安の影響がなければ、米国の景気回復は当初のシナリオから大きくは外れていないという認識を示している。したがって、現時点ではQE3を示唆する必要はなく、株価の動向とそれによる景気の下振れリスクを見極めたいということだろう。

昨年との違いは、いまはデフレリスクがないということだ。バーナンキ議長は、これまでの政策運営によって、デフレに陥ることを回避し、ドル安方向を実現していることに自信を深めている。金融政策としては、デフレを回避すれば、いずれは経済活動が回復していくだろうと考えている。株価に配慮しつつも、追い詰められているという感じではない。

--財政政策の持続可能性について言及しました。

オバマ大統領が話すべき内容を代弁した感がある。米国経済の長期展望について、楽観的であると同時に、そのためには必要な政策にしっかり取り組まないといけないと述べている。今回の金融市場の混乱が政治的な混乱から生じたものであり、財政の面で政府は踏み込み不足であるという強いメッセージがあった。

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