霞が関イクメンが育児で得た大きな気づき 「罪悪感のマネジメント」がカギ?

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復帰後も、フルタイムで働く妻が出張のときには、佐藤さんが娘たちを保育園に迎えに行き夕食を食べさせ、寝かしつけをする。そんな時は職場にテレワークを申請し、娘が寝た後、自宅で仕事をするようになった。とはいえ、忙しいさなか職場を去ることへの罪悪感はぬぐえない。子供が生まれると、いつも周囲に頭を下げていないといけない女性の苦しさが理解できるようになった。

職場ではもっとプライベートな話もしよう

育児をしていると、子どもの成長の早さを実感できる(写真は本文とは関係ありません)

「子どもができるとみんなどこかで“申し訳ない”と思いながら働いている。そうしたいびつな状況を改善するためには “罪悪感のマネジメント”が必要だと思います」

佐藤さんは、その一歩として、皆が職場でもっとプライベートな話をしてはどうかと提案する。

「まだまだ日本人には、プライベートなことは職場に持ち込まないという意識が根強くあるし、プライベートなことを聞くのを躊躇しがちですが、それでは職場仲間の“ワーク・ライフ・バランス”を実現させることは難しい」

育児だけでなく、勉強や趣味に時間を充て、友だちと食事をしたりデートをするのも、どれも同じく大事な“ライフ”。そうした話を皆でシェアして支え合える職場になれば、子育て中の人だけが一方的に支えられているという罪悪感を抱え込むこともなくなるのではないか。

「人事面談などのオフィシャルな場はもちろん、そうでない場でも、部下からは差し支えのない範囲で家族のこと、親のこと、自分のことを話してもらうように心がけるようになりました」

自覚的に「父親」としての顔を持ち、育児をすることにこだわった佐藤さんの経験は、結果的に、時間の使い方やマネジメントなど仕事上でも確実に広がりを見せている。佐藤さんにとっての今の課題は、どれだけ妻に代わって家事を担えるかということだそう。

「朝の支度や園への送りは私が担当しているとはいえ、仕事を切り上げて帰宅し、疲れてむずかる子どもにご飯を食べさせ、お風呂に入れて寝かしつけることのほうがよっぽど大変なことは分かっています。育児だけでなく、もっと家事を担っていくことは私の次の課題です」

こうした積極的な姿勢のなかから新たな視点が生まれ、それがまた、仕事にも生かされていくに違いない。

須賀 華子 フリーライター

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すが はなこ

津田塾大学卒業後、編集プロダクションに勤務し、母子保健分野の編集を行う。退職後北京大学社会学部へ留学。社会医療・福祉を学ぶかたわら、日本語学習本の執筆、翻訳に従事。帰国後、主婦向けウェブメディアの編集を経て、女性の生活・生き方、育児などをテーマに取材をしている。

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