【ムーディーズが日本国債格下げ・格付け担当者に聞く】政権が安定しないと、経済成長や財政再建の実現は困難だ

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これは金融危機後の大きな特徴であるとともに、97年のアジア通貨危機でも顕著に表れていた特徴の一つだ。当時も、危機に瀕した国は、必ずしも政府の財政状況が悪かったのではなくて、金融機関や事業法人が債務過多に陥っていた。これを補填して金融システムの安定化を図るだけの外貨準備が政府になかったために、債務の返済に滞りを生じた。
 
 ユーロ圏の場合、民間セクターではなく国債について、まさに非居住者の保有割合が高い順に、ギリシャを筆頭に、アイルランド、ポルトガル、イタリア、スペインと伝播してきている。

--それでは、金融危機後、ソブリン格付けを考える上で、本来の財務内容の分析だけではなく、政治リスクを考慮する割合が高まっているのではないか。

ソブリンの場合、究極的に市場の信認とは、政府の政策への信認、ということなので、政治リスクは直結する問題だ。

--スタンダード&プアーズが米国をAAAからAA+に格下げしたが、ムーディーズはAAAで据え置き、見通しをネガティブとしている。違いはどこか。

自社の基準しか語れないが、米国の格付け下支えの要因は、第1に非常に規模の大きい経済でしかも多角化されているので、安定しているということ、第2に歴史的にユーロ圏を上回る高い成長率を維持してきたということ、第3にAAA格の中でも政府債務残高の対GDP比の高い国、カナダ、ドイツ、フランスと比べても遜色ないレンジに収まっていることだ。

--銀行のBIS規制上で、国債は信用リスクゼロとして扱われている。しかし、ソブリンリスクがこれだけ問題になってくると扱いが変わる可能性はないか。

答えるには銀行アナリストのほうが適任かもしれないが、欧州の規制当局による金融機関に対するストレステストでは信頼性が疑問視され、その理由の一つに保有する国債のリスクの扱いの問題が含まれていた。したがって、これまでとは変わってきているといえる。

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