「オキシコドン」は、"警戒"するべき薬だった アメリカ人医師に聞く処方現場の実態

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オキシコドンとはどのような薬なのか(イメージ写真:MakiEni / PIXTA)
トヨタ自動車前常務役員のジュリー・ハンプ容疑者が麻薬取締法違反の疑いで逮捕された原因である錠剤の「オキシコドン」。日本のニュースでは、この薬は「麻薬」の一種と報道されていることが多いが、アメリカでは医師の処方箋があれば普通に手に入る強い鎮痛剤として一般的に知られている。
このオキシコドンとは一体どんな薬なのか。どんな患者に、いつ、医師はこの薬を処方するのか。末期のがん患者の痛みのケアにも詳しいデイビッド・グルブ医師に聞いた。

 

――ハンプ容疑者は「膝の痛み」があったと警察に伝えていると報道されています。

デイビッド・グルブ医師は家庭医学の専門家で、地域のかかりつけ医として40年以上の経験を持つベテラン医師。オレゴン州在住。1986年、オレゴン州の「ベスト家庭医賞」を受賞したことがある

ドクターによっては慢性の膝痛緩和のために処方することもあり得る。ただ、鎮痛剤としては非常に強い薬であり、依存性が高いので、ひとりの患者に対し、短期間に少量だけ痛み緩和として処方するのが普通だ。

例えば、昨年、私自身が膝の手術を受けた時に、担当医師から3~4日分のオキシコドンを鎮痛剤として処方された。それを飲むと、手術後の鋭い痛みが一時的に和らぎ、リハビリにも通うことができ、非常に助かった。その意味では、素晴らしい薬だ。これは、米国のFDAが認可している、痛みに劇的に効く薬だ。

私は医師だが、自分がオキシコドンを服用していた時、それを隠さず、普通に周囲の人に伝えていた。合法に処方された鎮痛剤で、非合法ドラッグではないわけだし、コソコソ隠す必要などないからだ。ただ、数日ですぱっとやめられない人にとっては、長期間依存してしまう可能性もあるので、注意が必要だ。誰にでも処方できる薬ではなく、そこは警戒しなければならない。

強いねんざ程度ならバイコディンを処方するのが普通

――膝痛にも、いろいろなレベルがあると思います。

私はハンプ氏の主治医ではなく、彼女を診察したこともないので、彼女個人のケースについては何とも言えない。しかし、逮捕される少し前に彼女は株主総会に出席していたとの報道があるし、その場で普通に歩けていたと仮定すると、私だったらオキシコドンは処方しない。

同じ鎮痛剤でも、バイコディンという薬がある。こちらは、「ハイドロコドン」という種類の薬で、オキシコドンより弱い。それよりさらに弱い鎮痛剤がコデインだ。この3つは強さに違いがある。足を強くねんざした際の痛みだったら、私ならバイコディンを処方するだろう。

ただし、「痛み」というものは、患者にとって非常に主観的なものだ。個人によって感じ方が違うから、そこはケースバイケースだろう。手術後の痛みの他に、慢性化した鋭い膝の痛みというものはあるし、痛みがひどくて歩けない、足を引きずっている、痛みを我慢できず泣いているという場合であれば、オキシコドンを処方する可能性がある。

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