(第71回)2013年度新卒採用予測リポート 企業と大学の問題意識

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●日本経団連「倫理憲章」の改訂ポイント

 これらの動きを受けて、日本経団連は「倫理憲章」を11年3月15日に改訂した。ポイントを挙げてみよう。

○学校教育への配慮
○早期化自粛
・インターネットなど不特定多数向けの情報配信以外の広報活動は、卒業・修了学年前年の12月1日以降に。学内セミナーも自粛。
・選考活動は卒業・修了学年の4月1日以降。
・正式内定は10月1日以降。誓約書要求などは一切しない。
○インターンシップ
・採用とは一切関係ないことを明確にする。1~2年生にも実施が望ましい。
・企業広報としてのプログラムはインターンシップと呼ばない。
・5日以上の期間、学生の職場への受け入れがインターンシップと呼べる条件。

これらの動きを受けて、大手就職情報会社で組織される業界団体は、就職ナビのプレエントリー受付、合同企業就職イベントの開催を12月1日以降にすることを決定した。
またこの数年に採活・就活の定番メニューになっていたインターンシップの合同説明会も、ほとんどの就職情報会社が行わないことになった。
これは大きな変化であり、例年なら春から動き出す採用ツールの制作などの動きはやや鈍くなっている。

●「倫理憲章」改訂に対するさまざまな意見

 日本経団連の「倫理憲章」改訂によって、新卒採用は正常化に向けて踏み出したように見えるが、それほど単純ではなく、賛否は分かれる。以下にHRプロが行った企業と大学調査からこの問題に対するコメントを紹介しよう。

<企業コメント>
・長期化早期化是正の観点から妥当と考える。
・より大手志向が強まる。
・学生側が準備不足になる。時期が集中するので大変になると思う。
・学生に接触する機会が少なくなり、大手に集中して内定率が悪くなる。
・広報活動を4月開始にして、選考を秋以降にするなどの大幅な変更でないと意味がないと思う。
・規則・規制を作ることで現在の就活問題に対応しようとする姿勢は、はっきり言ってナンセンスだと思う。
・採用が長期化することに対する対応の第一歩である。効果を産学双方で継続討議するべきである。

<大学コメント>
・学業の圧迫の観点からは歓迎であるが、短縮される分学生の就職意識を早めに喚起する必要がある。
・学内のセミナー時期が短くなり、大手企業は参加しなくなる不安がある。
・期間が短縮したことにより、スケジュールが過密となるためよけいに学業への圧迫となるのではないか。
・強制力を持たない倫理憲章の内容が変わっても、表面上の採用活動が自粛されるだけで、特に変わらないと思われる。
・採用広報の開始が12月以降であることは問題ないが、選考時期も同様に2カ月繰り下げてもらいたい。
・中堅大学及び、中小企業にとっては、選考の時期の短縮は不利になると思う。
・年々早期化・長期化している就職活動を見直すいい機会だと思う。
・良い傾向だと思うが、リクルーター制度を取る企業がおそらく増え、就職活動がより複雑化することが懸念される。

 

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