自民党若手が開く「報道圧力」勉強会の真相 企業と法制局にも圧力

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高市氏の秘書官は疑惑が報じられた後、発行元の小学館を相手取り、損害賠償などを求める訴えを東京地裁に起こした。

「気に入らない報道を訴えるのが安倍政権の特徴。裁判で勝つことが目的ではない。報道はウソだと世の中にアピールしたいんです」(同関係者)

巧みな報道管理 策士、策に溺れる

報道をコントロールしたい──そんなメディア観が透けて見える安倍政権。原体験は、1年間の短命に終わった第1次政権の失敗にあるようだ。第1次安倍政権は、閣僚の失態などを大きく報じられ、世論の支持をみるみる失った。

TBSの元キャスターで、民主党政権時代に内閣広報室審議官を務めた下村健一氏は、13年に行った安倍首相インタビューを振り返って、こう話す。

「安倍氏はかつて、祖父の岸信介元首相から『もう一度総理をやれたら、こうやったのに』と聞かされたそうです。その言葉があったから、一度辞めてジ・エンドではなく、『次やるときはどうするか』とイメージトレーニングしていたと話していました」

雌伏のときに研ぎ澄まされたのは、経済政策だけでなく、メディア管理術も含まれていたのだろう。現在、内閣では菅義偉官房長官や加藤、世耕弘成の両官房副長官、党では萩生田氏や棚橋泰文幹事長代理らの安倍側近が、メディア対策を担う。

「安倍政権のメディア対策は、支配や操縦といったそしりさえも受けない、洗練された部分が巧み。メディア同士が牽制し、自主規制するように仕向ける。権力は使わず、ちらつかせるだけでいいんです」(下村氏)

だが、安倍首相や側近たちは「洗練」されたかもしれないが、末端の安倍応援団までは教育が及ばなかったようである。

勉強会の設立趣意書には、こんな文言がある。

「政治家に教養と創造力が求められるならば、すなわちそれは、芸術家と共通する素養」

政治家と芸術家を同一視したのは、ナチスのアドルフ・ヒトラーだった。よもやこの文章がヒトラーの思想をもとに書かれたとは思いたくないが、今回の勉強会が芸術とはほど遠い内容だったことは、ヒトラーもうなずくのではないだろうか。

(編集部:野嶋剛、宮下直之)

※AERA 2015年7月13日号

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