オムロン、自動化機器がタイで好調な理由 アジア展開の中心地で起きていること

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タイで先行はしているものの、競争は激しいと話す前田氏

ターゲットは地場企業になる。「国民の生活がだんだん豊かになってきて、タイ国内向けの商品でも高品質の物を大量生産するニーズが出てきた。そうなると自動化の強みが発揮されるようになる。特に飲料品や食料品、包装機械分野での需要の伸びが、今までないほどに高まっている。」(前田氏)。

深刻化している人手不足も、自動化需要の高まりに拍車をかけている。労働者需要が伸びる一方、急速に少子高齢化が進むタイの失業率は1%を切る状態が続いており、人を雇いたくても雇えない状況になっている。

ジェトロでASEAN担当として海外地域戦略主幹を務める助川成也氏は「人手不足で賃金が毎年上昇しているとはいえ、タイは他のアジア地域と比べて産業の集積度が圧倒的に高いため、容易に他の地域に生産拠点を移すといったことは考えづらい。工場自動化による省人化が有力な対応策となるだろう」と指摘する。

 これまでと同じようにはいかない

ただ今後、取引先を増やすには、これまでとは少々違うアプローチが必要なようだ。

オムロンが得意としてきた自動車産業の場合は、企業ごとのニーズに合わせた専用の製造装置に、部品を納めることが多かった。だがたとえば食品メーカーの場合は、すでにできあがった汎用性のある製造装置を使うことが多い。したがって、その装置をつくる企業との関係を深めると同時に、食品メーカーに対して「どういう自動化ができるか」を直接提案していく必要がある。

今年7月には自動化技術を展示し、顧客の要望に応じて実証実験もできるセンターを設立する。同時に客先に出向いて提案や技術サポートを行うエンジニアの数を増やしており、拡充を続けていくという。

「シーメンスやロックウェルなどの競合が出てきていて、バトルロイヤルとなりつつある分野もある」と前田氏が言うように、タイも決して安泰ではない。この先狙い通りの躍進を遂げるには、一瞬の油断も許されなそうだ。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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