財政悪化と経済停滞は先進国共通の構造問題、日本企業は円高前提に対応策を--加藤隆俊・国際金融情報センター理事長(元財務官)《世界金融動乱》

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--今のドル安を「超円高」「投機的」との指摘もあるが、ファンダメンタルズ的に行き過ぎと言えるか。

実質実効レートや購買力平価などから見れば、「行き過ぎたドル安」という水準にはならないと思う。
 
 IMFなどの計算では、今回のドル安が始まる前だが、ドルは過大評価気味とされていた。最近多少修正されたが、まだ「行き過ぎたドル安」とは言えないだろう。
 
 ただ、ドルに対して、円の切り上がり度合いがユーロや人民元など他の通貨に比べて異常に大きいということは言えるだろう。

積極的な意味での円買いを正当化するだけの材料があるというよりも、先行きが読めない中で、一時的に円資産で運用する動きが強まっている。日本の金融機関は非常に安定しているし、国債も国内貯蓄で消化されているから極端な値動きにならないため、しばらく資金を置いておくには比較的リスクが小さいということで円が買われている。スイスフランも同様だろう。
 
 もしユーロ圏に問題がなければ、ユーロが対ドルでかなり強くなっただろうが、ユーロ圏も米国もどっちへ行くかわからないという状況では、消去法で円やスイスフランに資金を置いておくことが安全ということではないか。

■欧州危機、各国一斉の財政緊縮が生む弊害

--欧州債務危機も収束せず、一段と拡大の恐れも広がっている。

経済成長率が回復しないことが基本にある。債務を返済するには、歳入が上がらないと展望が開けない。イタリアやスペインを含め、ユーロ圏の成長の先行きの見通しはあまり明るくない。

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