風力発電の本格普及への高いハードル、補助金廃止で強まる“逆風”

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長期導入目標を策定し国が本腰入れる必要

全量買い取り制度導入以外にも、普及のための条件はいくつかある。
国内最大の風車メーカーである三菱重工業の上田悦紀・風車事業部企画・営業部部長代理は、「日本には風力発電の長期的な導入ビジョンがない。長期の導入目標を決めるべきだ」と指摘する。昨年、発電能力で米国を抜いて世界一に躍り出た中国では、国を挙げて風力発電の普及に取り組み、15年末には発電能力を10年末の2倍以上の1億キロワットまで増やす計画だ。米国では、30年までに風力発電の構成比を20%に引き上げる目標を掲げる。EUでも多くの国が国家としての目標を持つ。

これに対し日本では、風力発電協会が20年に1100万キロワット導入という目標を掲げるが、現時点で国の目標は存在しない。三菱重工の上田氏は、「中国の風車メーカーが急成長したのは、自国市場が伸びているから。国の長期目標があれば、投資へのモチベーションが高まる。メーカーとしては、自国市場が大きいほうが絶対にありがたい」と語る。

三菱重工は売り上げで国内首位とはいえ、世界では10位にも入らない。世界の風車メーカー上位には、自国市場が伸びている欧米や中国などのメーカーがズラリと並ぶ。

日本では、立地規制や建築規制の存在も引き続き大きな壁となりそうだ。もちろん、外国にも多かれ少なかれ規制はある。ただ、風力発電の導入を推し進めているような国は、立地可能なゾーンを国が決めており、事業者は発電所建設に当たり、事前調整に日本ほど多くの時間とエネルギーを必要としない。

陸上より風が強く、騒音の問題もないため、次世代の風力発電として期待がかかる洋上風力についても、日本の場合、事前調整に手間がかかる事情は同じ。漁業権の存在が大きなネックとなるからだ。日本では洋上風力の導入は進まず、全国で計14基しかない。風力発電協会の斉藤氏は、「国が設置可能なエリアをゾーニングして決めてくれないと、洋上風力は普及しない」と話す。

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