「日本の社史」の装飾をフランス人も認めた! 千島土地の100周年記念誌は、ここがスゴイ

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「千島土地の歴史」では、ひとつの項目を見開きにまとめています。左ページで歴史を説明し、右ページおよび左ページ下部に当時の資料・写真・図版等を掲載する、すっきりとしたレイアウトです。戦前の土地関係の書類など、社内で保管されている資料も数多く掲載されています。千島土地が所有する資料はインターネットの「千島土地アーカイブ・ブログ」でも紹介されているものもあります。

一方、社外から提供された資料は、巻末の「画像出典・所蔵先一覧」にまとめられています。ただ一覧の表にしただけではなく、小さめに図を再掲し、加工やトリミングをしたものにマークを付けるなど、丁寧に記録してあります。本書を見て調査する際や、のちのち確認が必要になった際に、親切な配慮だと思いました。

オリジナリティのある作り

さて、社史には、取引先の企業の役員や専門家・著名人による寄稿が掲載されることがよくあります。多くの場合、巻頭の「ごあいさつ」などに、まとめて載せられるのですが、本書の場合、関連する内容の章間に収めているのが特徴です。おおまかな内容を指定して原稿を依頼し、社史に組み込んでいったのだと推測します。一例として、航空機のリース事業を説明した章のあとには、同事業で関係の深いオリックスの宮内義彦氏が文章を寄せています。

「千島土地の歴史」の近年の章には、同社が所有する国の登録有形文化財・芝川ビルの保存や活用の様子や、水に浮かぶ巨大な「ラバー・ダック」による「アヒルプロジェクト」なども紹介されています。

同書の後半は、創業家の「芝川家の歴史」です。いくつかエピソードを紹介すると、二代目・芝川又右衛門は甲東園(兵庫県西宮市)の開発に携わり、自らの邸宅も甲東園に建てました。1911年に建設した芝川又右衛門邸は、現在、明治村(愛知県犬山市)に移築されています。その跡を次いだ芝川又四郎は、竹鶴政孝氏とも親交が厚く、ニッカウヰスキーの創業期を支えました。2007年には、芝川ビルの地下金庫室から戦後間もない頃に製造されたニッカウヰスキーが発見されたそうです。

次に、同社史の英語版を紹介しましょう。多くの海外版の社史は、日本語版を訳しただけ、あるいはダイジェストにしてまとめたものが多いのですが、千島土地の場合、日本語版と英語版は、まったく異なります。

英語版の社史は、大阪発祥の伝統的な染色技法「注染」で染められた風呂敷(布)に包まれています。布の中には5点の冊子が入っています。それぞれテーマがあり、同社の3つの主要な事業および芝川家の歴史を紹介した小冊子4点と、挨拶文と会社の概要を記した1点で構成されています。表紙の色は風呂敷にデザインされた色と図柄に対応しています。

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