廃線寸前だった弱小鉄道が生き残れたワケ 「四日市あすなろう鉄道」誕生までの道のり

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内部・八王子線は、4月に第三セクター鉄道の四日市あすなろう鉄道として再出発をはたした

「電車を利用するようになると、自宅から駅まで歩くときに道端ですれ違った人にあいさつし、駅で列車を待つときや列車内で顔見知りに会えば、自然と会話が生まれる。ぜひ電車を利用して、コミュニケーションを深める楽しさを実感してほしい」――。壇上からの呼びかけに、会場から温かい拍手が送られた。

鉄道の未来について話し合う

在来線のレール間隔は新幹線より短いが、それよりさらに短い「ナローゲージ」と呼ばれる路線がある。今年4月に近畿日本鉄道(近鉄)が経営分離した内部・八王子線である。両路線は近鉄75%と四日市市25%の出資で新たに設立された第三セクター鉄道の四日市あすなろう鉄道株式会社(YAR)が運営を引き継いだ。

6月6日、YAR内部線南日永駅に程近い両聖寺(りょうしょうじ)の本堂で、鉄道利用に関するパネルディスカッションが開催された。冒頭の発言はこのパネリストのひとりである、岩崎正義・YAR鉄道営業部次長が発したものである。

この日の午前中は、両聖寺前の東海道で地域の人たちによる伝統芸能「つんつくおどり」が披露され、大勢の見物客で埋め尽くされていた。パネルにも大きな注目が集まった。

「四日市の交通と街づくりを考える会」で副理事長を務める宗像基浩氏をコーディネーターとしてパネルはスタート。パネリストには、YARの岩崎氏のほか、日永地区連合自治会会長の南川征雄氏、大瀬古町子供と地域の環を育む会会長の井上誠二氏、尚絅大学文化言語学部講師の下村仁士氏、そして筆者が登壇し、内部・八王子線の活性化策について活発な議論が繰り広げられた。

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