景気低迷との悪循環、根深い米債務ショック

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一難去ってまた一難。米国のデフォルト(債務不履行)危機が去ったと思ったら、米景気二番底懸念やユーロ債務危機が再燃し、金融市場の緊張が解けない。日本政府は単独で円売りドル買いの為替介入を実施。日銀も追加金融緩和を発動した。

難航した米債務上限引き上げ交渉は期限寸前で与野党合意が成立、米国債の元利払いが滞る最悪事態は避けられた。8月2日に成立した予算統制法で、米連邦政府の債務上限は約14・3兆ドルから最低2・1兆ドル引き上げられ、来年末までの分は確保された。

また、今後10年で、約2・5兆ドルの財政赤字を削減。具体的には、(1)裁量的歳出を10年間で1兆ドル近く削減、(2)超党派の委員会を設置し、今年11月に社会保障・税制改革を含め1・5兆ドルの追加赤字削減法案をまとめ、年末までに議会可決を目指す、(3)合意できなければ、2013年初から自動的に歳出削減を行う。

ただ、超党派の委員会で、与野党の議論が再び紛糾するのは必至。具体策はまとまらず、党派対立が来年の大統領選まで続く可能性は高い。

赤字削減目標が小さすぎるとの批判も多い。金融危機後の税収減や財政出動で、米国は09年から毎年、対国内総生産(GDP)比で10%を超す財政赤字が続く。今年末予想の累積債務は対GDP比で99%。先進7カ国では日本、イタリアに次いで高い。

将来的にも、「高齢化と医療費の高騰により、米国の財政は中長期的に維持不可能な道筋にあるのは明白」(安井明彦・みずほ総合研究所ニューヨーク事務所長)と指摘される。「トリプルA」からの格下げも、意外感は薄れた。

深刻なのは、景気の土台がぐらついていることだ。米国の景気指標は3月以降、急悪化した。6月分の個人消費支出は1年9カ月ぶりに前月比マイナス。7月の製造業景況指数も大幅に悪化。財政再建策の行方に不透明感を感じている企業が多いためだ。

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