2012年に向け緊迫する米中関係、米中台で政権交代?!《田村耕太郎のマルチ・アングル・ビジョン》

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自由貿易・為替・知財保護で圧力

貿易だけではない。為替では人民元管理相場の恩恵を被っている中国におけるアメリカ製造業は、別の側面で中国政府に大きな不満を持っている。この不満はアメリカ経済の減速を受けて限界に達しつつある。それは中国市場における知的所有権保護の欠落である。

横行する海賊版や技術のコピーにより、アメリカ製造業は中国で予定をはるかに下回る利益しか上げられていない。それ以上にアメリカの自動車や航空産業で核となる技術が守れないとなると、これは国益に直結する。
 
 中国に拠点を構えるアメリカ製造業が、本国回帰やインド等への移転を決断するケースも増える可能性が高い。その時、中国政府の知的所有権保護をめぐって緊張が高まるだろう。

加えて、前述の米中両国の政治日程もお互いに対する圧力の原因となる。アメリカの大統領選挙や議会選挙では、景気後退と失業率の高止まりを受けて、最大の貿易赤字国である中国への不満が表明されるだろう。
 
 政治家が選挙を理由に外国に圧力を掛けることの、実際の経済効果は疑わしいが、選挙へ向けて不景気の不満を源泉とする中国への圧力は高まっていく。

大衆先導的愛国者の新主席

選挙がなく、政権交代が決まっている中国でも、対外圧力は高まる。

次期国家主席に内定している習近平氏は、時として激しい愛国的発言で人心掌握を狙う。習氏は大衆寄りのスタンスをつねに強調している。かつて、「今の中国共産党幹部の演説や文章は、“冗漫、空虚、偽り”で覆われている」「一般大衆は歴史を作る原動力だ。腹を割って話さなければ、大衆は理解できない」と発言。はっきりと大衆につねに自分の言葉でメッセージを送るリーダーとなることを宣言している。

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