日本は、なぜ「シー・シェパード」に弱腰なのか 「海賊」と認定しない理由とは?

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シー・シェパードは走行する捕鯨船の前にまわり、ワイヤーを流してスクリューに巻きつけ、捕鯨船を停止させたりもする。停泊する船はバランスが悪く、横波で転覆する危険がある。ましてや船体の側面に攻撃を受けると、ひとたまりもない。

「我々はシー・シェパードが近づけないように放水で対抗する。そうすると彼らはランチャースリングショットを使って信号用ロケット弾や酪酸の薬剤を投げ込んでくる。その破壊力は凄まじく、防護網を破って入ってくるほどだ」(藤瀬氏)。

けが人や死者が出る危険性を顧みず、シー・シェパードがこうした派手な行為を行う目的は、捕鯨活動を妨害することに加えてその様子を映像に収めるためだ。彼らの船にはカメラマンが乗り込み、迫力あるシーンを撮影している。2008年からその映像をアニマルプラネットの「クジラ戦争」という番組で放映しているが、またたく間に視聴者が増えて、歴代第2位の高視聴率を記録した。それに乗じてシー・シェパードが莫大な寄付を集めていると、調査捕鯨を行う共同船舶の伊藤誠社長は次のように語る。

「米国ワシントン州にあるシー・シェパード・コンサベーション・ソサイエティが受けた寄付金の額は、2008年には398万4179ドル、2009年には458万1880ドルだったのが、2010年には739万4230ドルと急増し、2011年には1004万8802ドル、2012年には1267万7344ドルまで増加している。過激な反捕鯨行為を行えば行うほど、シー・シェパードへの寄付金が増えていくという構造になっている」

潤沢な資金をもとに武装を強化

潤沢な資金を持つシー・シェパードは、ますます攻撃性を強めていった。2009年にはアメリカの有名司会者ボブ・バーカーからの500万ドルの寄付で「ボブ・バーカー号」を購入。同号は日本の捕鯨船に体当たりし、船体に穴をあけた。

最近では捕鯨船に給油するタンカーに対しても、シー・シェパードは攻撃するようになった。給油しているところに割り込み、発煙筒を投げ込むなど妨害活動を行うのだ。「これは極めて危険な行為だ。タンカーには大量の油が積載されている。引火すれば大惨事になりかねない」(伊藤氏)。

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