ギリシャ発の深刻な金融危機は起きない HSBCのグローバル債券運用責任者に聞く

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――日本は過去、何度も財政再建を約束しては反故にする、ということを繰り返してきました。今回も計画という名のつくものが出てはきますが、信用できますか?

私の立場としては、信用しないと申し上げることはやめておく。財政再建策が実行に移されるかどうかは日本経済の経済成長見通しにかかっていると思う。もし経済が成長しているのであれば、財政再建策は実行しやすいだろう。しかし、なかなか経済成長が見込めないと、再建策を実行に移すのは困難だ。財政再建の意思があっても、経済動向によってはアクションをとるには時間がかかると思う。

量的緩和からどう脱出するのか、議論が必要

――異次元の金融緩和(QQE)によって、日本銀行が日本国債の4分の1を保有しています。中央銀行がこれだけのシェアを保有するのは異様だと思いますが、QQEをどう評価していますか。

ただ、まず認めなければならないのは、日銀が日本国債を買い入れることで成功裏に物価を上げることができたということだ。これは認めないといけない。残念なことに、国外要因である原油安がきたので物価は下がったが、いったん物価が上昇したことは確かだ。日本は長期間デフレ経済だったので、これに真剣に対処しなければならなかった。その意味で日銀が日本国債を買う以外に、方法は非常に限られていたと思う。

――では、QQEの「出口」をどう考えますか?

出口のことを考える前に、はたして追加緩和があるかどうか考えなければならないかもしれない。ただ、FRBなどと比べ、日銀の出口は簡単ではないだろう、ということは容易に想像できる。これだけの買い入れを行っているので、出口に向かえば、国債の流動性をマーケットから奪うことになる。慎重に、大変な結果をもたらさずに出口に向かうのは難しい。日銀だけでなく、他の中央銀行も含め、この量的緩和からどう脱出できるのか、議論する必要がある。

――そうした中、外国人投資家は日本国債を買い越しています。

日本国債の利回りはそれほど高くないが、海外でグローバルなポートフォリオを持っている投資家からみた場合、日本国債は(投資先の)分散の一つになる。ボラティリティも他のアセットクラスと比べて低く、グローバルベンチマークの中で大きな部分を占める。グローバルに分散化されたポートフォリオを考えたときに、日本国債は一つの有効な投資先だ。さらに、ボラティリティが低いので、米国債利回りの上げ幅と比べ、(FRBの)利上げ局面で守られる側面もある。さらに、相対的には1年前と比べ、欧州の国債利回りが下がったので、日本国債との利回り差がなくなり、日本国債の魅力が高まっている。

山田 徹也 東洋経済 記者

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やまだ てつや / Tetsuya Yamada

島根県出身。毎日新聞社長野支局を経て、東洋経済新報社入社。『金融ビジネス』『週刊東洋経済』各編集部などを経て、2019年1月から東洋経済オンライン編集部に所属。趣味はテニスとスキー、ミステリー、韓国映画、将棋。

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