ギリシャ、素人政治の暴走でユーロ離脱か デフォルト迫る、国民投票後のシナリオ

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デフォルトや銀行休業による混乱は、国民投票を控えるギリシャの国内世論にショック療法として働く可能性がある。国民投票の実施表明前に行われた最新の世論調査では(国民投票の実施表明後の世論調査はまだ公表されていない)、57%が債権者との合意に賛成、29%が反対、14%が態度未定(Alco/Proto Thema調査)や、47.2%が合意に賛成、33.0%が反対、18.4%が態度未定(Kapa/To Vima調査)で、交渉期限が迫るなかでギリシャ国民も合意支持に傾きつつあった様子が窺える。

ただ、5日の国民投票での設問は「債権者側の求める財政再建策を受け入れるかどうか」の二者択一で、ギリシャ国民の多くが希望するユーロ圏残留の是非を絡めたものではない。また、与党が受け入れ拒否を呼び掛けており、投票の結果は予断を許さない。

ギリシャの脅しはEU側には通用しない

債権者側の財政再建策の受け入れを拒否する投票結果となった場合、ギリシャ政府は民意を盾に改めて債権者に対して財政再建策の再考を求めるとみられるが、債権者側がこれに応じる可能性は低い。追加支援に関する協議は完全に決裂し、ECBは銀行への流動性支援を打ち切る可能性がある。

この場合、ギリシャが自力で銀行救済費用を捻出するのは困難で、結局EU諸国の支援を仰ぐことになるか、独自通貨の発行などで銀行救済資金を捻出する可能性がある。前者の場合、紆余曲折の末に緊縮受け入れに舵を切ることになる一方、後者の場合はユーロ離脱への第一歩を歩み始めることを意味する。

債権者側はギリシャのデフォルトや国民投票の結果が受け入れ拒否となっても、まずはギリシャのユーロ残留を前提に努力する方針を表明している。ただ、財政再建策の再考を求めるギリシャ側の強硬姿勢が続けば、債権者側も態度を硬化させ、離脱容認に傾いていくことも予想される。

そもそも、EU条約にはEUからの離脱規定はあるが、ユーロ圏からの離脱規定は存在しない。EU離脱規定を援用するのであれば、原則として一方的な離脱や離脱の強制はできない。つまり、ギリシャ国民がユーロ残留を希望する限り、デフォルト後もギリシャがユーロ圏に居座ることも可能だ。ただ、離脱規定が存在しないこともあり、本当に居座ることが可能か、どういう手順で離脱を進めるのかは不透明だ。

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