新型デミオで見えてきた、マツダのサバイバル戦略

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 さらにマツダにはもう一つ事情がある。同社の輸出比率は8割以上と、日系自動車メーカーの中で最も高い。円高の中で国内生産を維持するには、抜本的なコスト構造の見直しが不可欠だった。

コストをかけずに車両性能を高めるためにはどうするか。スカイアクティブを貫く考え方はそこにある。それは技術面にも表れている。

スカイアクティブ技術に決して派手さはない。これまでのエンジン技術を愚直に追求した。新型エンジンでは、燃料噴射装置やピストン形状の見直しなどによって、ガソリンエンジンとして世界一の高圧縮比14(通常圧縮比は10~11)を実現した。また来年から採用する排気システムは、1990年代の高性能車に多く搭載されていた装置を再度応用する。

人見本部長は「スカイアクティブエンジンは、アクセラに搭載する現行の直噴エンジンより安い」と打ち明ける。欧州メーカーが採用する、過給機を併用しながらエンジン排気量を小さくする“ダウンサイジング化”も、コストを理由に見送った。

燃費向上には100人の技術者がいれば、100通りの方法がある。だが、「理論上突き詰めれば、七つの要因に集約できる」(同)。それらを一つひとつ潰し、究極のエンジンを目指す。今後は燃料の薄い混合気を燃焼させるリーンバーン(希薄燃焼)技術を応用し、さらなる燃費改善に取り組む。

デミオによって販売革新にも着手

そしてマツダが変えようとしているのは、技術だけではない。

埼玉県桶川市。国道17号線沿いにある埼玉マツダ桶川店には、半径1キロメートル圏内に他メーカー系列のディーラーが5店ひしめく。競合激化に加え、震災の影響で販売の低迷が続いたが、7月に入り受注台数は計画比6%増と好転した。

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