再編必至の電炉40社、電力不足に原料高も追い打ち

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にもかかわらず、国内には40社もの電炉メーカーがひしめく。ちなみに日本と電炉の生産量が同じ韓国には7社しかない。前期の国内電気炉基数は347基で国内粗鋼生産能力4290万トン。これに対し、実際の生産量は2450万トンにすぎない。設備の稼働率は57%で電力コストの安い夜間中心の操業が続いている。電炉メーカーの中堅幹部は「稼働率50%台だと苦しい」と吐露する。中国や韓国などから割安な製品の輸入が増えていることなどもあって、過当競争に拍車がかかっている。

原料となるスクラップ価格の高騰も大きな痛手となっている。スクラップは米国やロシア、日本などで多く発生している。そのため日本の電炉メーカーも、以前はそれほど調達に苦労しなかった。

ところが世界的な鉄鋼需要の拡大に伴い、特に中国や韓国メーカーが日本から大量に購入している。加えて、高炉メーカーもスクラップの使用量を拡大。莫大なコストがかかる高炉の設備増強をしなくても、原料と一緒に投入すれば、粗鋼の生産量が増えるためだ。その結果、スクラップ需要は急激に増加し、価格もハネ上がっている。電炉メーカーは価格転嫁をしたいところだが、建築用資材の販売が低迷する中、大幅な値上げは難しいというのが実態だ。

さらに今後、追い打ちをかけるのが電力料金の上昇だろう。日本鉄鋼連盟によると、電炉業の売上高当たり電力使用量は製造業平均の約10倍。全原発を稼働停止し、火力発電で代替した場合のコストが単純に電力料金へ上乗せされると、経常利益の約65%を喪失するとしている。

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