「学校カメラマンは限界」5千枚撮影で日給2万円 首都圏の運動会に「関西から助っ人」仰天事情

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写真館の経営者らで構成される日本写真文化協会は、カメラマン不足についてこう語る。

「以前から、学校行事が重なることが原因でカメラマンが不足します。最近はコロナ禍明けで学校行事が再開され、人手不足がクローズアップされているということだと思います」(事務局の澤田京一さん)

だが、昨今の「代写カメラマン」獲得競争はあまりに苛烈だ。なんと2024年4月現在、すでに来年の学校行事のスケジュールが押さえられていたりする。

「今秋の首都圏の運動会の撮影も受けました。10月12日に幼稚園や保育園、小中学校の運動会が集中していて、いまだカメラマンを確保できていない写真館もあるようです。代写カメラマンの募集はいつでもあります」(松本さん)

記者が求人サイトを覗いてみると、すぐに募集が見つかった。

“副業も大歓迎。写真撮影が好きな方、興味がある方にピッタリなお仕事です”

“これからカメラマンとしてやっていきたい、という学生さんもご相談ください!”

記者は長年、写真雑誌「アサヒカメラ」の編集に携わってきたが、代写カメラマン経験者の知り合いは多い。代写をメインにしているカメラマンもいる。だが、学校行事が軒並み中止になったコロナ禍をきっかけに、この業界から去った人は少なくない。

東京商工リサーチによると、昨年1~8月の写真館などの倒産は過去最多の20件だった。

以前からの苦境に加え、コロナ禍で入学式、修学旅行、結婚式などが減少し、関連支援も打ち切られたことが倒産の原因だという。代写メインのカメラマンの窮状は推して知るべしだ。

30年前から報酬変わらず

そもそも、高価な機材が欠かせず、機材を運搬する車も必要なのに、報酬は決して高くない。大手卒業アルバム業者が価格破壊を引き起こし、潰れた写真館はかなりある。

残った写真館も値下げに追従せざるを得ない状況になった。代写カメラマンの報酬は、首都圏の場合、1校につき2万円ほどで、30年ほど前からほとんど変わらないという。

首都圏に拠点を持つ60代の広告カメラマンも「代写の仕事を長年引き受けてきたが、本音を言うと、もうやりたくない」と漏らす。

友人が卒業アルバムの制作をしていて、卒業式や入学式などが重なる繁忙期に代写を頼まれると、断れない。

「ギャラがあまりにも安すぎる。これでは、他のカメラマンを紹介することもできない」

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