北陸新幹線「敦賀駅」、在来線乗り換え時の憂鬱 いつまで続く?開業のめでたさも中くらい

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8分乗り換えを見ていると、やはり相当にきびしそうだった。下車したホームを離れるのが遅れる人もいる。改札口で時間を喰う人もいる。敦賀駅ではそういった人が乗り遅れないよう、神経を尖らせていた。けれども、前日の喧噪の中を含めて「お急ぎください」と連呼する声は聞かなかった。そして若い駅員がコンコースから人の消えたホームまで小走りで確認し、階段の下で頭上に大きなマルを描いてコンコースの駅員に伝達している。それからややあって、出発信号機が赤から青に替わった。駅員の確認が運転事務室に伝わり、当務駅長の最終チェックを経て信号を切り替えているのだろう。

混雑時間帯の乗換改札口の光景。自動改札を奔流のように人が流れてゆくが、発車標を見上げて立ち止まる人は多く、有人改札口もすぐに渋滞が発生する(写真:久保田 敦)

今は関西でも北陸人気に沸いているが

今般の北陸新幹線金沢―敦賀間開業は、在京各社の報道では東京から福井まで1本で行けるようになり、とても便利になったと伝えていた。バラエティ番組も福井や北陸に焦点を当てた。東京からすれば、米原あるいは金沢での乗り継ぎがなくなり、雪や風雨に気を揉む確率も格段に減った。しかし、名古屋や関西視点に切り替えると、事情は反転する。例として北陸新幹線が金沢まで開業した際、金沢は空前の観光ブームとなり、富山も少なくない数の企業が本社を移したり機能を分散させるなどの動きがあった。だが、そのぶん東京に顔が向いてしまったと評される。

今回、富山は乗り換えが敦賀に移っただけの変化と言ってもよいが、関西・名古屋にとって福井・金沢までが煩わしさを伴うこととなり、北陸全体が遠退く事案と見られ、心配されている。現実はどうなのか。

在阪の旅行社に聞いたところ、今のところはじつは好調だと言う。添乗員が同行する団体旅行を例にすると、さすがに1〜3月は能登半島地震の影響で前年より2割減ったが4〜6月の予約は逆に2割も増えている。個人タイプの商品も1〜3月は半分以下だったが、4〜6月分は前年並みに回復し、新幹線が延びたことと「ふっこう割」の適用が相まって北陸の注目度が高まっている。一般に関西人は新しいもの好きと言われるせいか、今のところ乗り換えや、特急料金の値上がり分に伴う商品価格の上昇といったデメリットが影響するような判断はできないらしい。

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