スズキ会長、38年連続"司会"は円熟の境地 株主から「120歳までやってほしい」との声も

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スズキは新興国中心に海外市場の依存度が高い。その海外で積極的な設備投資を計画しているため、内部留保の蓄積を重視してきた。逆に言えば、株主還元が課題だが、「継続的な安定配当を基本とし、当期は連結配当性向15%をメドにする。目標としてきた売上高3兆円、経常利益率6%はいずれも達成できた。新たな中期計画は現在策定中なので、なにとぞよろしく」と理解を求めた。

懸案である国際仲裁裁判所におけるVWとの調停は、「諸手続きはすべて完了している。判決が(出るまでに)長い時間を要していることで困惑しているが、結論が出たら報告する」とした。

「あんな人、ほかにいないよ」

5月の決算会見で「私が辞めるわけにもいかない」と述べた修会長。横に座ったのは長男の俊宏氏(撮影:今井康一)

総会に訪れた、スズキを主要取引先とする内装部品メーカーの会長は「VWの問題が片付くまでは代われないよ。次は(長男の)俊宏さんだとみんな思っているけど、まだ準備は出来ていない。メディアへの発信力、軽業界を代表した発言力も抜群。若くしてトップになって、一番長くトップにいるんだから。あんな人は他にいないよ」と、修会長に高い信頼を寄せる。

もっとも、褒めちぎる株主ばかりでもない。「質問をしたかったが当たらなかった」とやや不満そうなスズキOBの男性(70)は、「自動車業界の平均に比べてスズキの給与は低い。福利厚生も見劣りする。待遇の悪さから退職率が高い。会社の発展にはもっと人を大事にすべきではないか」と辛口だ。だが、この株主でさえ「修会長の経営手腕は大したもの」と言い切る。

5月の決算発表の席で「取締役の若返りが必要だが、私が辞めるわけにはいかない」と語った修会長。総会での堂々たる振る舞いを見ながら、この言葉の重みを再認識せざる得なかった。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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