24年春「私鉄新ダイヤ」コロナ禍脱してどう変化? 目立つ「小さな改善」削減された列車の復活も

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また南流山駅では、八潮で後続の快速の待ち合わせをする各駅停車の発車が快速発車の2分前とかなり間隔が短く、ダイヤ改正当初は快速が八潮の手前で各駅停車に追いついて詰まってしまうことがよくあった。今は、快速はいつもよりゆっくり走らせて、各駅停車は南流山を発車時刻の00秒に発車できるよう運転士たちが頑張っている。

ともあれ、この快速新規停車で八潮だけでなく、隣の三郷中央駅の利用者も快速を利用できるようになった。利用者が少ないからと途中駅の追加停車も検討せず通勤快速をなくしてしまったどこかの鉄道会社とは大違いである。

北千住駅でつくばエクスプレスと接続する東京メトロ千代田線は、夕ラッシュ時の北綾瀬駅直通列車が1時間最大6本まで増えた。日中は20分おきと本数は少なくても均等な間隔で北綾瀬行きが来ているのに対し、夕ラッシュ時は全体の本数に対して北綾瀬行きの本数が少なく、綾瀬駅で階段を使って同駅始発の北綾瀬行きに乗り換えるほうが速いケースが多かった。

千代田線16000 北綾瀬支線
綾瀬―北綾瀬間を走る東京メトロ千代田線の車両(写真:traway/PIXTA)

今回の改正で北綾瀬行きが増えたのはいいが、それが5〜10分おきに来たり、連続で来たりすることがある一方で、30分近く来ないこともあるといった「不整脈ダイヤ」であることは変わらない。もう少し乗車チャンスの偏りは改善できないものか。

余談だがこの北綾瀬行きの不均等なダイヤにより、直通先の小田急線登戸駅では、北綾瀬行きが2本並んで同時発車するシーンが見られる(登戸駅21時06分発急行北綾瀬行きと、各駅停車北綾瀬行き)。

終電間際に助かる小さな変化

その小田急では深夜、下北沢駅の急行停車ホームが変わった。上り列車は0時03分発急行新宿行き、下り列車は0時08分発急行海老名行き(新百合ヶ丘から各駅停車海老名行き)以降のすべての列車は、本来急行は地下2階ホーム発着のところ、地下1階ホーム発着となった。

終電接続を気にしながら急いで急行に乗りたい人にとっては、いつもは地下2階まで降りなくてはならないところ、移動が短く済むので助かるようになったというケースも多いだろう。しかも終電前に地下2階ホームの閉鎖ができれば、駅員の終電後の業務が軽減されて労務環境的にもいい。一石二鳥ではないか。

いかがだったであろうか。首都圏の輸送を担う鉄道でも、湾岸部の某線を運行するどこかの会社とは違って速達列車の使い方の工夫が見られた線区と、運転間隔に課題が残る線区とに分かれたのが今回の私鉄ダイヤ改正の印象だ。来年はどのようなダイヤ改正になるか。さらなる利便性向上に期待したい。

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北村 幸太郎 鉄道ジャーナリスト

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きたむら こうたろう / Koutaro Kitamura

1989年東京生まれ。2008年昭和鉄道高等学校運輸科卒業、2012年日本大学理工学部社会交通工学科マネジメントコース卒業。乗り鉄、ダイヤ鉄。学生時代は株式会社ライトレールにインターン生として同社の阿部等社長のもと、同社主催の「交通ビジネス塾」運営などに参加。

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