入学式取材で見えた「東大新入生」のリアルな変化 「将来像これから」「政治の話は引いてしまう」

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入学を祝福された東大生らはそもそも、なぜ東大を目指したのか。先の文科三類の女子学生にたずねると、「進学校に通っていたので、やるなら1番上を目指したかった」と一言。将来については「国際関係を勉強してみたいが、イメージがあまり固まっていないからこそ、東大にした」という。

「やりたいことが決まってないからこそ、東大を選んだ」というフレーズは、この女子学生に限らず、この日に記者が話を聞いた多くの新入生から聞かれた。

東大の教育課程は、1~2年生の「前期課程」と、3~4年生の「後期課程」に分かれており、後期から専門学部に配属される「進学選択」の仕組みが特徴だ。東大生といえども、入学した段階で将来の明確なビジョンを持つ学生は少なく、入学後に進路を決められる点に魅力を感じたとの声が多かった。

入学式では、真船文隆・教養学部長が式辞で、過去に学生たちを集めて「未来の自分の姿」を語ってもらったエピソードを紹介し、「感じたのは、(入学直後の学生は)自分の将来を具体的に語るのに必要なボキャブラリーが不足しているということだ。前期課程を、『自分の夢を語るボキャブラリーを育む時間』にしていただきたい」と、新入生に語りかける場面もあった。

データが示す入学動機の変化

夢を見つけるのは、入学後でいい――。新入生から感じられた意識は、データでも裏付けられる。

東大が2021年度に実施した「学生生活実態調査」では、入学動機について「入学後に学部の選択が可能だから」との回答が48.6%と最多で、次の「社会的評価が高いから」の42.1%を大きく上回った。

東大生が入学を決めた主な動機の推移

この調査からは、興味深い経年変化も読み取れる。2014年時点では52.1%と最も多かった「社会的評価が高いから」という動機が、大きく低下傾向にあることだ。同様に、「将来の就職を考えて」との回答は減少傾向にある一方、「スタッフ、設備が優れているから」は大きく増えた。

一連のデータからは、社会的評価や就職上の有利さといった「東大ブランド」=「名」へのこだわりが薄くなる反面、東大に行くことで幅広い選択肢や充実した研究環境を得られるという、「実」が重視されるトレンドがみられる。

キャリアの多様化や流動化が進む中、東大に入っただけでは安泰とは言えず、東大生も早い段階で将来を見定めることが難しくなっているのかもしれない。

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