サラリーマンよ、昭和の一社懸命はもうやめよう 「物価と賃金の好循環」へのいちばんの近道とは

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それはさておいて、景気ウォッチャー調査のコメント欄はあいかわらず冴えている。お急ぎの方は、調査の中にあるスーパーとコンビニの情報発信を拾い読みすることをお勧めする。この2業種は個人消費の最前線だけに、以下のような鋭い観察が寄せられている。

* 4月からの値上げが報道されていることで、月末に近づくにつれて、トイレットペーパー、ティッシュペーパーが異常なほど売れている。物価高に対する消費者の防衛意識が一層高まっている状況がうかがえる(北海道・スーパー)。
* 客の購買力が落ちてきている。食品の度重なる値上げが効いているのではないか。ガス・電気料金の補助がなくなったら、一層食費に掛ける金が減ってくるようにみえる(東海・コンビニ)。
* 客の節約志向は変わらず、来客が割引デーに集中しているため、平日の来客数が伸張しない状況である。客が買い物する日を決めている感じで、割引デーでのまとめ買い傾向が強い。ハレ型商品も伸張せず、安価なプライベートブランド商品の構成比が挙がっている(中国・スーパー)。
* 物価上昇の影響で来店頻度が減少しており、必需品以外の買い控えが顕著になっている。価格に敏感になっているためリーズナブルな商品が動いており、全体の底上げにはなっていない(コンビニ経営者)。

ラーメンの「脳内1000円の壁」は打ち破られるべき

真面目な話、筆者も3月末にビールやウイスキーを買いだめしようかと思ったところであった。全国津々浦々の生活防衛意識が、いかに強くなっているかを痛感させられるコメントが並んでいる。

思うに物価高とは、お財布を直撃するだけではない。われわれの頭の中には「脳内価格」とでも呼ぶべきものがあって、「これはこの値段」というだいたいの水準ができあがっている。それを大きく上回る料金を支払うと、「こんなはずではない!」という拒否反応が生じてしまう。メンタルなストレスが溜まってしまうのだ。

一例を挙げれば、最近は「ラーメン一杯1000円」を超える店が増え始めた。行列ができる店、豪華トッピングが売りの店、店主のこだわりが詰まった店であれば、確かにそれもアリだろう。そして最近は、円安メリットを享受している外国人観光客が、日本のB級グルメに関心を寄せている。彼らにとってみれば、「こんな値段で、チップも要らないなんてもうサイコー!」といったところだろう。

一方でラーメン屋の倒産や休廃業が増えている。東京商工リサーチによれば、昨年1年間のラーメン屋の倒産は45件となり、前年比2.1倍になった。「休廃業および解散」も増えていて、いずれも2009年の調査開始以来、もっとも多くなったそうである。

つまりラーメン業界ではスクラップ&ビルドが始まっている。小麦や豚肉などラーメンの具材はもとより、光熱費や人件費、水道代までが上昇している。

となれば、ラーメンにおける「1000円の壁」は打ち破られるべきであろう。そうじゃないと、「物価と賃金の好循環」が実現しないことになる。とはいうものの、「ラーメンは庶民の食べ物」との思いも強いし、実際に値上げを我慢しているお店もある。そして「脳内価格」が断固として「ノー!」と言っている場合、無理に支払うのは精神衛生上もよろしくない。

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