震災二重債務対策のカギを握る「産業復興機構」、早期設立には多くのハードル

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 (3)に挙げた利子負担軽減の184億円は、あくまで中小企業再生支援協議会に相談し、「再生可能性がある」と判断された企業に対して充当されるもの。それだけに、支援協議会の相談窓口体制の拡充と債権買い取りを行う復興機構の設置が実現していなければ、せっかくの利子補給金は動かぬおカネとなりかねない。

既存債務を抱えながら、新たな借り入れを起こすことに躊躇する被災企業に対し、相談体制を強化し、場合によっては産業復興機構が債権買い取りを行って既存債務の負担を軽減する仕組みはわかりやすい。

だが、その実現には多くのハードルが予想される。まず、各県で支援協議会の相談体制強化にどれだけの人材が確保できるのか。「30人規模というのは簡単ではない。金融機関OBや現役行員の方の派遣など、金融サイドとの調整が必要になる」(被災地の県関係者)。

「産業復興機構」の立ち上げも、中小企業基盤整備機構に加えて、地元金融機関とでどれだけの規模の出資金を集められるのか。

また、機構の運営会社はどこが担うかという問題もある。実際の債権買い取りとなれば金融機関と機構での価格交渉が必要になるだけに、支援協議会と機構の一体的な運営に向けた課題は多い。

岩手県では地元金融機関や中小企業基盤整備機構との話し合いを進めており、岩手県版「産業復興機構」の設立に向けて準備委員会を近々立ち上げる見通し。「実現にはスピード感が重要。今後1~2カ月で運営のメドをつけたい」(岩手県商工企画室)と、被災地の復興機構第1号としてモデルケースとなれるかが注目される。

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