「HPVワクチン」に疑問を持つ人が知らない事実 男性への接種補助も一部の自治体でスタート

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その積極的接種勧奨が停止されている期間に、小学校6年生から高校1年生までの接種期間がスッポリ被ってしまった人は、ワクチンについて何ら知らされず、機会を逃してしまったことになる。そこで、現在ではキャッチアップ接種として、機会を逃した人に対して公費での助成が提供されている。厚労省のホームページによると、対象者は以下の条件を満たす人だ。

・平成9年度~平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)の女性

・過去にHPVワクチンの接種を合計3回受けていない

この条件に合致する人は、令和7(2025)年3月まで、HPVワクチンを公費で接種できる。申し込み方法など詳細は、お住まいの自治体のホームページで確認してほしい。

本当に子宮頸がんを予防するのか?

HPVワクチンは本当に子宮頸がんを予防するのか? もちろん、イエスだ。すでに複数の研究で、HPVワクチンを接種した人たちの間で子宮頸がんの発生が少ないことが報告されている。がんの原因となるHPV感染をワクチンで防ぐことが、がんを減らしたのだ。

HPVワクチンは、日本では科学ではなく、政治の場で利用されてしまった。2013年当時、HPVワクチンに関する議論が盛んだった最中、複数の国会議員や地方議員が「HPVワクチンに子宮頸がんを予防する効果がない」と主張した。これはコロナ禍のときに、アメリカで共和党支持者がワクチンを打たず、マスクもしなかったのと同様、科学的に誤った主張だ。

相手に対抗するためには誤りであろうと自分の考えを主張するのが政治の闘い方なのだろう。それに多くの人が巻き込まれてしまった。このような過ちを繰り返さないよう、後世への教訓とすべきだ。

アメリカでの推計ではあるが、今やHPV関連がんは、女性の子宮頸がんより中高年男性での中咽頭がんのほうが多い。中咽頭というのは、口を開けてノドを見たとき、一番奥に見える壁の部分だ。中咽頭がんの早期発見は不可能で、進行してリンパに転移して首の腫れで気づく人が多い。

幸い、HPV関連の中咽頭がんは、HPV陰性のものよりも治療が効き、治癒する率が高いことがわかっている。現在の主流は、抗がん剤治療と放射線治療を併用し、その後小さくなった原発巣を手術で切除する方法だ。声を失ったり、容貌が変わったりすることはない。とはいえ、予防できるに越したことはない。

この中咽頭がんもHPV感染が原因なのだから、ワクチンで予防できるはずだ。

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