「セルフコーヒーでズルして逮捕」その後の人生 「出来心」で懲戒免職となった元公務員が語る

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小出さんが警察の聞き取りを受けている間、家族はコンビニを訪れ、店が用意していた示談書にサインをして、15万円を支払った。

事件が原因で、離れていってしまった友人もいるという。何より仕事を無くして、インターネットには名前も残った。

家に引きこもり、愚かなことをしたと悔やみ、家族への申し訳なさを感じながら、ずっと心の中でモヤモヤを抱えているという。

「私の過ちに気づいたときに注意してほしかった」

店にもよるが、客がセルフコーヒーのマシンで押したボタンは、店側は把握できるようになっている。

「やってしまった立場で言うのは大変厚かましいが、店は私の過ちに気づいたときに注意してほしかった。そしたら不足分の金額を払っていたし、二度とやらなかった」

サイズや種類が多岐にわたる飲み物の中から、自分が買ったものではない商品まで選択できてしまう仕組みは、客の良心をベースに作られているとも言える。

「買ったもの以外は注げないような仕組みにしたり、そもそも店員さんが注いでくれるような形であれば、間違いは起きない。コンビニや経営者には、犯罪者を出さないような努力をしてもらえないかと思っている」

事件を起こす1年ほど前にも隣の福岡県で同じような事件が報道されていたが、知らなかったそうだ。

「記事を読んで、犯罪だと明確にわかっていれば、私はやらなかった」

最近でも同様の事件が定期的に報じられ続けているのを見て、いてもたってもいられなくなったという。

「しっかり考えて、後から後悔しないように、小さいことと思っても後から大変なことになる」

「これからずっと先、私は『悪い先祖』として一族の間で知られていくのではないかな」と不安な気持ちになることもあるそうだ。

この春から、小出さんは就労支援センターを通じて仕事を始めた。元同僚が声をかけてくれたという。1日数時間、週3日から始めて、心身に負担にならないようにする。

「こんな変なことをして、惨めな思いして生きていって良いのかと思って、社会に恩返ししたくなった」

コーヒーを持つ小出さん
「家で飲むのとそんなに味は変わらない」と話す(写真:弁護士ドットコム)

小出さんは取材をきっかけに、敬遠していたコンビニのセルフコーヒーを久しぶりに飲んだ。「家で飲むのとそんなに味は変わらない」。

この3年でコーヒーのレギュラーが20円、カフェラテのラージは50円値上げされていることに驚いていた。

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