「地位も名誉も失っても」ギャンブル依存症の怖さ 「意志の問題」ではなく「病気」という認識を持つ

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厚生労働省研究班は2017年、日本でギャンブル依存症の疑いがある人は成人の3.6%(推計320万人)と発表した。海外と比べるとかなり高い数字だ。例えば、アメリカ・ルイジアナ州は1.58%(2002年)、フランスは1.24%(2008年)、韓国も0.8%(2006年)にすぎない(2014年の厚労省研究班調べによる)。

依存症は、医学的には脳の機能異常と考えられている。

私たちが通常感じる気持ちよさやワクワク感、多幸感は、脳内の「脳内報酬系」の回路が刺激されて、神経伝達物質「ドーパミン」が大量に分泌されて生まれるが、ギャンブル依存症になると機能異常が起き、この部位が鈍感になる。そこで、より強い刺激を求め、行動をコントロールできなくなってしまうのだ。

こうした脳の機能異常は、ギャンブルをやるほどリスクにはなるが、必ず起こるものではない。

甘いものを食べ続けて糖尿病になる人とならない人がいるように、ギャンブルに浸かっていても依存症になる人もいれば、ならない人もいる。ただ、その違いをわけるものが明らかになっていない今、やはりギャンブルをやり続けること自体、危ないのだ。

「なかでも、依存症はストレス解消と結びつきやすいと言われている。ギャンブルでストレスを解消している人は、特に気を付けたほうがいいと思います」(田中さん)

20代の男性の相談が増えた

「考える会」は2014年に発足し、当事者や家族から年間約1200件の相談を受け付けてきたが、最近の傾向は20代の男性の相談が増えたことだという。それまでは約2割だったが、この5年で4割を占めるようになった。

その背景には「スマートフォンの台頭や、コロナ禍で在宅時間が増え、ネットに触れる機会が多くなったこと、さらに、公営ギャンブルのオンライン化がある」と田中さんは話す。

営業時間が終われば閉まるパチンコ店や競馬場などと違い、オンラインギャンブルは24時間どこでも休みなく延々と賭け続けることができてしまうため、その分、依存症になるまでのスピードも速まっているという。

「学歴も職歴もまだない若いうちに発症すると、たとえ回復してもそこから社会スキルを身に付けることがより困難になる」と、田中さんは懸念している。

違法なオンラインカジノ(オンカジ)も広がっている。

オンカジは海外のカジノが運営している仮想空間カジノをインターネット上で行うものだ。短時間に何度も繰り返せるため、賭ける額が大きくなり、多額の借金をしてしまいがちという特徴がある。

日本では公営ギャンブル以外の賭博は法律で禁止されているが、オンカジの多くは海外で運営されているため、警察は十分に実態を把握できていないのが現状だ。

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