罪にはならない“自分との賭け”

漫画家/弘兼憲史

 ゴルフをするオヤジたちの中には、「何もしないのも面白くないから握ろうか」という人がいます。“握る”とは賭けるということで、どちらかが損をすれば「賭博罪」が適用される立派な犯罪。実際に、数千円という金額で書類送検された例もあります。ところが、友人ゴルフという気軽さもあってか、1打いくらにハーフのプラスマイナスいくら、という“賭けゴルフ”が、今でもまかり通っているのです。男は変な闘争心を持っていて、仮に賭けていてもいなくても「いくつで回った?」と聞いて、自分より悪かったらホッとして、良かったら悔しいというような、そういう生き物なんです。だから百円賭けようが、千円賭けようが“勝ちたい”という情熱は同じなんです。

賭けしてゴルフをすると、自分の心の中の汚い面が出てしまうから嫌なんです。一緒に回っている人がバーディーを取ると、口では“ナイスバーディー”とか言ってるのに「チッ」と舌打ちしたりする自分がいて素直に喜べない。パットのときも心の中で「外せ~、外せ~……」と念じたりする。相手がいいプレーをしてもなかなか心の底から祝えない。これではゴルフが卑しくなってしまいます。賭けるならプレーの後のビールとか、その程度にしたいですね。ただ、僕は“自分との賭け”は、やっています。ゴルフ場に出掛ける前に【今日はハーフ45で回る】というふうに、目標を立てるわけです。それで43で回ったら、今日、俺は勝ったと、自分にご褒美を与えてあげるんです。ところが、47くらいで回って、4人の中ではいちばん成績が良かったとします。でも自分の目標に対しては負けているので、全然うれしくないんですね。43で回ったときは、みんな周りがうまい人で、その中で自分がいちばんビリだったとしても、満足できてうれしいんです。僕は、自分自身の立てた目標に挑むというゴルフが好きです。

ある雑誌の企画でリー・トレビノさんと対談をしたことがありました。彼はダラスでメキシコ人の血を引く家系に生まれ、家族のために“金を稼ぐ”と、5歳の頃から農場で働いていたような少年期を過ごし、キャディーをしながらプロになった人。日本の恵まれたプロゴルファーとは、スタートから違っていたんですね。17歳のときにはアメリカの海兵隊に入隊し、士官とのゴルフパートナーを務め、上等兵への昇進の助けになったと耳にしたこともありました。そんな彼に「昔は賭けゴルフで生計を立てていたと聞きますが、実際のところどうなんですか?」と聞いてみました。すると「ゴルフをやって賭けなければ、公園を散歩していたほうがマシだ」というお茶目な答えが返ってきました。真実はやぶの中、まっ、トレビノ伝説の一トークとしましょう。ちなみに、「いちばん得意なクラブは?」という質問には「俺のドライバー」と言いながら、ご自分の股間を指さしました(笑)。さすがトレビノ!!

漫画家/弘兼憲史(ひろかね・けんし)
山口県出身。早稲田大学法学部卒。松下電器産業(現パナソニック)勤務を経たのち、1974年に漫画家としてデビュー。現在、『島耕作』シリーズ(講談社)、『黄昏流星群』(小学館)を連載するほか、ラジオのパーソナリティとしても活躍中。
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