「人に迷惑をかけない」が行きすぎる社会への懸念 坂東眞理子さんが語る「孤立」と「自立」との違い

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「自粛警察」などと呼ばれましたが、「自分はがまんしてルールに従っているのに、ルールに従わないのは許せない」という心理なのだと思います。

人に迷惑をかけないようにする人が多いのと同時に、「人から迷惑をかけられるのは絶対にいやだ」と考える人も増えています。

「寛容な気持ち」を忘れない

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「保育所の子どもの声がうるさい」「高齢者がレジでもたもたしていてイライラする。待たされるのはいやだ」というように、自分の都合だけを声高に主張する人もいます。

「まあ、いいや」と少しだけ寛容な気持ちで受け入れられれば、お互いにラクになるはずです。

人から迷惑をかけられるのをいやがる気持ちは、「自分も迷惑をかけるのはいやだから」となって、困っても助けを求めるのをためらってしまうことにつながります。それはとてもさびしい社会ではないでしょうか。

人間は完全な存在ではありません。知らず知らずに迷惑をかけることもあります。迷惑をかける人がいても、もう少し自己主張を控えて、「頑張ってもうまくいかないときもあるさ」「困っているときはお互いさまよ」と柔らかく受け止められるようになるといいですね。

坂東 眞理子 昭和女子大学総長

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ばんどう まりこ / Mariko Bando

1946年、富山県生まれ。東京大学卒業後、1969年に総理府(現内閣府)に入省。内閣広報室参事官、男女共同参画室長、埼玉県副知事、在オーストラリア連邦ブリスベン日本国総領事などを歴任。2001年、内閣府初代男女共同参画局長を務め、2003年に退官。2004年から昭和女子大学教授、2007年から同大学学長、2014年から理事長、2016年から総長を務める。著書に330万を超える大ベストセラーになった『女性の品格』ほか多数。

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