必要悪の「ムダな会議」は上手にサボれ! 生産的な会議が減っていく「構造的」原因

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「組織の論理」を重視するアリ田課長にとって重要なのは、社員の間のコミュニケーションであり、情報共有です。組織を円滑に運営し、関連部門を有効に巻き込んで実行につなげていくために、「自分は聞いていない」という管理職や社員を最小にすることは必須のことだからです。だからアリ田課長にとっての「報告」や「連絡」は、手段ではなく目的そのものになっていきます。

大きな組織になればなるほど、「創造のための仕事」と比較して、「伝達のための仕事」の割合が増えていきます。分業という形で組織や役割の横の分化が進むと同時に、管理スパンの増大による階層という縦の分化も進んでいきます。そうなっていけば、創造の仕事より伝達の仕事が多くなってくるのは必然です。

アリとキリギリスの価値観の違い

採用基準や「社員に求める能力」でも、「コミュニケーション能力」はたいていトップ3に入ってくる項目ですが、コミュニケーションを重視すればするほどアリ型の人材が増えていき、創造的なキリギリスの居場所はなくなっていきます。

アリ田課長のような組織人間は「ホウレンソウ」が大好きです。部下に報告させて、そのレポートを読むことそのものが仕事だと思って疑いません。多数の部下から報告や相談が来ることが自分の存在意義であると思い込むことで、そこから何らかの付加価値を生み出すところまで頭が回らなくなっていきます。

「無駄な報告だけの会議は不要だ」という掛け声が社内に出回ることはあっても、結局、偉くなるのは「報告がうまい人」だというのはよくある話です。

キリ山くんは会議に実質的な成果を求めるから、人数が増えて意味のある議論ができなくなることを避けたかったのです。

キリ山くんのような「キリギリス型」部下にとって、創造的行為を含まない「単なるホウレンソウ」は苦痛かつ無駄以外の何ものでもありません。

キリギリス型にとってのコミュニケーションは、単なる手段でしかありません。それによって前向きなアドバイスが得られたり、予算や人員が増強されるなどのメリットがあったりするなら、言われなくても自主的にやりますが、「報告のための報告」などには1円の価値も見いだしません。極論すれば、「報告クレクレ上司」など何の価値もなく、いないほうがいいと思っています。

ここには、組織という階層を重視するか否かという、アリ型とキリギリス型の価値観の違いも潜んでいます。そもそも組織内のコミュニケーションは上司側の一方的な事情によるものが多く、「多数の関係者を集めて順番に報告させる会議」というのが「階層が上の人にとってはメリットがあるが、階層が下の人にとってみると何の意味もない」ものの代表です。

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