売り手市場で横行する「オワハラ」とは? 内定辞退すれば、「裁判」と脅す悪質事例も

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就活は学生も企業も真剣勝負

前倒しの採用活動に力を注ぐのは中小だけではないようだ。大手の中にも、大学OBの務めるリクルーターが学生を囲い込んでいる企業があるという。採用人数が多いため、8月から選考していたのでは間に合わないのだ。ある大手電機メーカーの人事部長は「8月以前に実質的に内定者を決める。8月1日の選考試験に来てくれれば、その場で内定を出す」と明かす。

内定を辞退したら…脅す企業

オワハラのパターンは、以下の三つに分けられる。

1.「就活を終わりにすれば、この場で内定を出す」と言って、他社の選考を辞退させようとする。2.他社の選考に行けないよう、わざと面接や研修の日程を入れる。3.内定時に書かせた誓約書を盾に、入社するよう迫る。

このうち学生を特に悩ませるのは3.だ。「内定を辞退したら裁判を起こす」などと学生を脅す企業がある。各大学のキャリアセンターは、「誓約書に法的効力はない」と説明しているが、萎縮してしまう就活生も多い。

大学、短期大学などで構成される就職問題懇談会は2月、学生の職業選択の自由を妨げる行為をしないよう、企業に要請している。

文部科学省も実態を調査し、6月25日に結果を発表した。すると回答した約3890人の学生のうち、1.9%の学生がオワハラを受けたと回答。同様に大学・短期大学82校のうち45.1%が、学生からオワハラの相談を受けたと答えている。

就活は学生の将来に大きな影響を及ぼす大事な節目。実際にこのようなことを行っているのは一部とみられるが、企業の都合を押し付けることは許されない。

(撮影:尾形文繁)

「週刊東洋経済」2015年6月27日号<22日発売>の「核心リポート05」に一部加筆)

田宮 寛之 経済ジャーナリスト、東洋経済新報社記者・編集委員

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たみや ひろゆき / Hiroyuki Tamiya

明治大学講師(学部間共通総合講座)、拓殖大学客員教授(商学部・政経学部)。東京都出身。明治大学経営学部卒業後、日経ラジオ社、米国ウィスコンシン州ワパン高校教員を経て1993年東洋経済新報社に入社。企業情報部や金融証券部、名古屋支社で記者として活動した後、『週刊東洋経済』編集部デスクに。2007年、株式雑誌『オール投資』編集長就任。2009年就職・採用・人事情報を配信する「東洋経済HRオンライン」を立ち上げ編集長となる。取材してきた業界は自動車、生保、損保、証券、食品、住宅、百貨店、スーパー、コンビニエンスストア、外食、化学など。2014年「就職四季報プラスワン」編集長を兼務。2016年から現職

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