「猫ミームになぜ惹かれるのか」真面目に分析 切り抜かれた「動く猫」たちは言わば共通言語

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猫ミームラバーという30代の男性会社員は言う。

「誰もが『あるある』と共感できる感情が『猫』で表現されていて、親しみやすい。とっつきやすいし、つい見てしまう」

男性のお気に入りは、アヴリル・ラヴィーンの「ガールフレンド」に合わせて踊る猫。仕事がうまくいったときの達成感や、おいしいものを食べたときの高揚感が想起され、見るだけで気分がアガるという。

なぜ、猫ミームが人気なのか。

知らない人生を垣間見る

トレンドに詳しいニッセイ基礎研究所の研究員・廣瀨涼さんは言う。

「動画を作る人にとっては日常や自身の過去の体験の再現だったとしても、動画の視聴者にとっては非日常。他人の人生を、デフォルメされたユニークな物語として、垣間見ている感覚があるのだと思います」 

SNSで発信された個人の体験談がバズる現象と似ているかもしれない。

「猫ミームを見ると、制作者の気持ちと、猫の顔やしぐさとがリンクしていることがわかります。猫ミームが広がるうちに、『この動画はこんな感情』という解釈が多くの人に共有されるようになりました」

切り抜かれた動く猫たちは、いわば共通言語で、LINEスタンプのようなものだという。

ただし、ガチの猫好きに猫ミームを見せると、戸惑った様子。こんな返事があった。

「うーん、踊る猫は困ってるように見えるし、頭を抱えて叫ぶ子猫は乳飲み猫で眠いだけじゃないかな。NOと叫ぶ猫はお風呂で洗われてるのかなと思うけど……、世の中が猫で盛り上がってくれるなら、野暮は言いません」

そう聞いて、ふだん猫動画を見ているときと、猫ミームを見ているときの自分の情動に違いがあることに気がついた。

猫動画を見ているときは、「猫かわいい」が気持ちの主軸だ。

だが、猫ミームは猫のかわいさや癒やしを目的には見ていない。人間社会の縮図を、猫ミームを通してちょっとだけ俯瞰して見て、共感したり心を慰めたりしている。

たとえば頭を抱えて鳴く子猫のミームなら、「もうイヤ」と叫ぶのがあんなに小さな子猫だから、登場人物をなんだか無性に愛しくいじらしく感じてしまうのだ。

この猫ミーム動画、起源は定かではないそうだが、2024年明けごろから一気に増えたという。今年の初めから流行しているタイプの猫ミームについて、前出の廣瀨さんは一度は調査を試みたが、あまりの数の多さに途中で諦めたという。

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