思想としての3・11 河出書房新社編集部編訳 ~何かの始まり 共感の共同体に危うさ環境に安住

思想としての3・11 河出書房新社編集部編訳 ~何かの始まり 共感の共同体に危うさ環境に安住

評者 映画監督 仲倉重郎

本書は、3・11東日本大震災の約1カ月後に、1922年から73年に生まれた16人の思想家が、その感想、あるいは日頃の思いをまとめたものである。

この震災は大津波の脅威をあまねく知らしめた。押し寄せる大波のすさまじさ、一転して急激な引き潮の威力。「一瞬で数千年の歴史を喪失した」(友常勉)。だが、「私たちの多くが見たのは、見てしまったものは、多くは映像だった。実際にその場にいたのでも、近くにいたのでもない」(立岩真也)。だから、「異様な状態になるものかと思ったのですが……存外シーンとしていた」という吉本隆明の言葉が強く残る。

大津波の映像は繰り返し流されたが、そこには死者の姿はなかった。遺体にとりすがる遺族たちという、具体的な生々しく騒然とした映像はもちろん、ましてや被災者の怒りが憤激となって混乱を引き起こしたという映像はなかった。

福島の原発事故で震災の様相が一変した。それは田島正樹の言うように「我々の意気を阻喪させる」ことにもなっている。だが「3・11が、何かの始まりを告げる日付であるような気がしてならない」という山折哲雄の言葉に共感する。

一方で、にわかに現出した「共感の共同体」「とりわけ文化産業やスポーツ産業において挙行されている種々の儀礼」は、被災者とそれ以外の人との非和解的な対立を誤魔化す機能を果たしてもいるという(小泉義之)。それは震災直後に突如あふれ出た“がんばれニッポン”的CMの不気味さを言い当てている。

本書の意味は、友常勉の言うように「震災と人災が露わにした闘いの武器をつくるためであり、またこのカオスのなかで私たちが溺れないため」である。それぞれが3・11の意味を考え続けていくしかないのだろう。

河出書房新社 1680円 176ページ

  

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