「システム大移動」遅れ続出、自治体の本音と悲鳴 「コストは膨張」「クラウド実質選べない」現実も

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――標準システムに移行した先で、クラウドサービスはどう選びますか。昨年11月、ガバメントクラウドの提供事業者として、AWS(アマゾン ウェブ サービス)など外資系4社以外で、さくらインターネットが初の国内事業者として条件付きで採択されました。

C クラウドについては基本的に、ベンダーのほうから「ここを使わせてほしい」というような話が結構ある。本来は自治体側で選べるのが望ましいが、そこで問題なければそれでいいかなとも思う。最終的に、外資系になりそうな気はしている。

E 自治体に裁量権がないのは、まさしくその通りだ。

今のベンダーは、「このクラウドでいきます」と話を持ってくることが多い。個人情報を海外の業者に渡すのはリスキーだし、さくらのような国内のクラウドは大事だと考えるが、ベンダーに「このクラウドでやってほしい」と頼んでも、向こうも人手不足で困るという話になる。もう少し期限に余裕があれば、選択できる余地も出てくるのではないか。

B 役場では、私が他の業務と兼務しながら、ひとりでシステム業務も見ている状態。正直、どこの事業者がいいとか、技術的な話がわかる職員もいない。

ベンダー側の意向でAWSになりそうだが、ベンダーを飛び越えて何か決めるというのがそもそも難しいのが本音だ。

今の現場はかなり混乱している

――全国一斉に移行することでトラブルが発生し、住民が不利益を被る懸念はありませんか。

D 今は過渡期で、新・旧両システムの移行や連携の部分をどうするかというところで、かなり混乱している。最善を尽くしてはいるものの、なかなかこちらのイメージ通りとはいかない。システムを移行して蓋を開けてみたら、トラブルも大なり小なり出てくる可能性はある。

F 20年ほど前、市町村が合併したときにシステムの全面刷新を行ったが、当時は相当短期間で全面乗り換えをすることになり、合併当日の朝もまだ完成していないなど、窓口が大混乱に陥る状況になった。

今は当時以上にシステムに依存することが増えたので、トラブルが起きたときの影響もすごく大きい。今後2年という短い移行期間になっているが、慎重を期して対応したい。

E 同じく、市民サービスへの影響が極力出ないよう進めたいのは当然だが、正直心配なところはある。

ベンダーのSEが不足しており、今回のシステムとは全然関係ない担当だったSEも回ってくる。そういう中で無理に進めると、トラブルも起きかねない。新しいシステムが入ってから、職員の習熟度が低いことで現場が混乱することも懸念はしている。

茶山 瞭 東洋経済 記者

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ちゃやま りょう / Ryo Chayama

1990年生まれ、大阪府高槻市出身。京都大学文学部を卒業後、読売新聞東京本社の記者として岐阜支局や東京経済部に在籍。司法や調査報道のほか、民間企業や中央官庁を担当した。2024年1月に東洋経済に入社し、ITベンダー業界を中心に取材。情報通信、メディア、都市といったテーマに関心がある。趣味は、読書、散歩、旅行。学生時代は、理論社会学や哲学・思想を学んでいた。

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