日本の「ホワイトハッカー」育成に不可欠な視点 学ぶ場の充実により年々レベルは向上している

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長期ハッカソンは課題解決型学習(Project Based Learning)に近い手法で、大学や企業で活躍する専門家(トレーナー)の助言を受けながら、受講生自らが課題を見つけ、さらにその課題を解決する能力を身に付けることを目標としている。

ほかの事業と比べ、モノづくりのアプローチに主眼を置いているのが特徴だ。5つのコースから自分の志向に合わせた選択ができ、トレーナーや仲間とじっくり時間をかけて研究開発に取り組むことができる。

SecHack365は、この7年間で延べ251人の卒業生を輩出。日本では十数万人ものセキュリティ人材が不足していると言われ続けており、それと比べるととても少ない人数のように思える。

しかし、そもそも論としてセキュリティ業界には、たくさんの人材を必要としないものの解決すべき重要な課題領域が多くある。例えば、国産のセキュアOSの開発や、AIによる自動防御システムの開発などだ。

こうした研究開発が担える人材の育成も重要であり、SecHack365には引き続き期待したい。

進化する「国立高専」の人材育成

高等専門学校(以下、高専)での人材育成も注目だ。高専は、15歳から5年間の一貫教育によって、産業発展を支える工業の専門家を育てていく役割がある。

そのため、独立行政法人国立高等専門学校機構(以下、高専機構)は、2016年より産学連携の早期サイバーセキュリティ人材育成事業「K-SEC」を進めている。

筆者も実務家の立場としてIoTセキュリティの授業を担当している。サイバー攻撃の手法が日々進化しているため、現在の教員だけではタイムリーかつ実践的な教育を提供するのが難しく、高専機構では「副業先生」を公募し、民間企業のITプロフェッショナル人材を招聘する試みも始まっている。

全国に51校ある国立高専の卒業生は、毎年約1万人だ。そこでK-SECでは、下図のようにサイバーセキュリティのトップオブトップの人材を毎年1%(100人)輩出し、20%を占める情報系の高専生(2000人)に社会で必要とされているサイバーセキュリティ技術を習得させ、さらには機械・建築・土木・電気電子・材料工学など全専門学科の学生がプラスセキュリティ人材に育つことを狙っている。

高専が輩出する人材育成イメージ
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