「親ロ心理」はあっても欧州を向くブルガリアの本音 ソ連共産圏の優等生からイノベーションハブに

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ここでブルガリアと日本との関係を振り返ってみよう。 1970年に開催された大阪万博のブルガリア館が、後の「明治ブルガリアヨーグルト」開発の契機になった。社会主義体制下で長く最高指導者だったジフコフ書記長は日本の発展に目を見張り、「日本に学べ」と各界に指示した。

ガブリエル副首相(右)と筆者(写真・外務省)

日本に関する本が広く読まれ、日本語や空手、柔道、生け花を学ぶ人は今でも多い。1990年代に始まった民主化の時代には、政治やビジネス、学術、文化、スポーツ、観光交流がさらに活発になった。ソフィア大学に日本学科が設置され、地方を含めいくつかの大学・中高校でも日本語を教えている。

「日本には憧れと純粋な敬意を持つ」

高名なテレビジャーナリストに「なぜ日本に?」とたずねた。「ブルガリア人は日本に、そうなりたくてなれなかった自分の姿を投影している。東洋と西洋の狭間で揺れ動いた近代史の200年間、ブルガリアはうまくいかず、成功した日本に憧れと純粋な敬意を持つ」という。

こちらが襟を正す答えだったが、一方で彼は「ここ10数年日本の姿が見えない」と心配もする。

かつて5大商社を含む10商社がソフィアに支店を構え、三菱重工業や東芝、大成建設といった日本の大企業も拠点を置いていた。水力・風力発電所や、ODA(政府開発援助)ではソフィア地下鉄建設、環境設備、港湾開発、文化・教育など多数実施している。

しかしODAの供与が終了し、2010年までにほぼすべて撤退した。今も矢崎総業をはじめ自動車部品やセガ(SEGA)といったゲーム関連、海運業で6500人ほどを雇用している。だが、インフラ案件に欧州各国や米中韓が手を挙げる中、日本企業の名は聞かない。

EU加盟から17年経ち、経済も政治も外交もEUとの歯車がかみ合ってきた。2025年初めのユーロ加盟を目指し、財政健全化、物価の安定が進んでいる。

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