嫌な事を言ってくる子に「やめて」と伝えるべき訳 すでに「だれも傷つかない」という状態ではない

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<理由をそえて断れば相手もわかってくれるよ>

さそいを断るときには、必ず理由を言うようにします。

たとえば、「その日はおじいちゃんおばあちゃんの家に行く予定があるんだ」みたいな感じですね。すると相手も、「じゃあ仕方ないか」と思ってくれやすくなるんです。

これがただ「行けない」「無理」みたいにバッサリと断っちゃうと、相手もムッとして「せっかくさそったのに!」「あんなこと言わなくても!」なんて思いやすくなるんだ。

この「理由を言うか言わないかで、相手の気持ちが変わる」というのは、じつは実験でもわかっていることなんです。

その実験は、駅にある切符の自動券売機の前に並んでいる人の列に横入りする、というものなんだ。横入りってずるいことだから、並んでいる人は当然いやがります。「なんで横入りするんだよ!」「みんな、ちゃんと並んでるんだぞ!」みたいにね。

でも、横入りをするにしても、「じつは家族の具合が悪くて、急いで帰らなくてはならないんです」などと理由を話すと、並んでいた人たちはおこらなくなります。それどころか、「どうぞ先に買ってください」という雰囲気にもなるんだよね。断るにしても、理由を言うのと言わないのでは、相手の受け取り方にかなり差が出るんです。

理由を言いにくい場合には、「用事があるんだ」みたいに、ぼかして伝えてもいいんじゃないかな。たとえば、「勉強をしたいから」と言ってしまったら、「勉強なんてあとでいいよ」と言われそうですよね。そういうときは、「用事がある」でOKです。勉強だって大事な用事の一つですよね。

『こんなときどう言う?事典』より引用

代わりの提案をしてみよう

理由を話してきちんと断ったら、まずは「さそってくれてありがとう!」と伝えて、できれば「その日はダメだけど、この日は大丈夫だよ」と、代わりの提案をしてみてほしいんだ。

「べつの日ならOK」と伝えることで、相手も「自分がいやで、断ったわけじゃないんだな」と、ホッとしてくれると思うんだよね。

そして最後に「またさそってね」と伝えることも大切です。この一言があるとないとでは、相手の気持ちが全然違います。

POINT 「またさそってね」という気持ちを伝えよう

こんなときどう言う?事典
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齋藤 孝 明治大学教授

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さいとう たかし / Takashi Saito

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー著者、文化人として多くのメディアに登場。著書に『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『読書力』(岩波書店)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『質問力』(筑摩書房)、『語彙力こそが教養である』(KADOKAWA)、『読書する人だけがたどり着ける場所』(SBクリエイティブ)ほか多数。著書発行部数は1000万部を超える。

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