マクドナルド「どん底→V字回復」の知られざる軌跡 異物混入時代から率いたカサノバ会長のリスク対応力

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マクドナルドの店舗(撮影:東洋経済オンライン編集部)

とくに大きかったのは2014年に起きた期限切れ鶏肉問題。その際、発覚して10日後に記者会見が開かれたが、その対応の遅さが批判を浴びた。さらに、その会見では、カサノバ氏は「マックはだまされた」「一部中国の工場で起きた彼らの仕業です」といった内容を発言し、「責任転嫁をしている」と批判された。

翌2015年1月に開かれた、異物混入に関する記者会見では、カサノバ氏は欠席。欠席の理由として「海外出張中」という説明がなされたが、意図的に出席しなかったのではないかという臆測や、記者会見よりも出張を優先したことに対する批判が起こった。

日本マクドナルドは外資系の会社であるし、グローバル化が進んでいる産業界で、外国人が社長を務めることは不思議なことではない。しかし、「食文化」という言葉に象徴されるように、外食・食品産業においては、統一された基準でグローバル展開をすることが難しく、国や地域に合わせてローカライズした経営が必要になってくる。

カサノバ氏は、日本マクドナルドの初の外国人の社長であり、アウェー感は強かったのではないかと思う。

外国人の経営者は、経営が順調にいっている間はよいが、業績が悪化したり、不祥事が起きたりすると、バッシングを受けやすい。日本人の経営者よりも役員報酬が高いため、妬まれやすいし、「日本人の気持ちがわかっていない」「日本のビジネス慣行が理解できていない」といった批判も受けやすい。

日産元会長・最高経営責任者(CEO)のカルロス・ゴーン氏が逮捕された際に受けた激しい批判を思い出してみていただきたい。

欧米人からすると、「安直に謝罪すると法的に不利になる」「謝罪の理由と対象が明確でない謝罪はする必要はない」というのは一般的な感覚かもしれない。しかし、日本でこれをやってしまうと、「責任逃れをしている」「反省をしていない」という批判を浴びてしまう。

当時のカサノバ氏も、まさにそのように捉えられており、「だから外国人経営者はダメなんだ」といった言われ方をされていた。

いかに業績とイメージの回復を成し遂げたか?

一連の不祥事の直後、日本マクドナルド社の業績は一時的に低迷したが、短期でV字回復を果たすことになる。

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