ワタミ、メニュー戦略に株主の不満が噴出 社長が9月からの新方針を説明

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ほかの男性株主からは「以前、魅力を感じたのは(自社農場の)ワタミファーム。そこで出てくる野菜が良い。だが、最近はサラダを頼んでもみすぼらしい。量も少なくなった。ワタミファームを活用して、すべての店で提供しなくてもいいが、もっと工夫したらいいのではないか」という意見も出た。これには、清水社長は「次のメニュー変更で、国内契約栽培農家の方から野菜を仕入れ、サラダのカテゴリーでも充実したものにしたい」と新メニューの拡充を詳しく述べた。

今年3月に社長に就任した清水氏。昨年の値上げを見直し、メニュー戦略の大胆な変更に踏み切った(撮影:梅谷秀司)

昨年来、ワタミのメニュー戦略は試行錯誤が続いている。2014年4月、和民では商品価値の向上を理由に、平均皿単価を15%引き上げていた。桑原豊社長(当時)は、「価値ある商品を充実させ、もう1品頼んでいただけるような政策をとったので、(消費者は)値上がりしたというイメージではないと思う」と述べ、自信を見せていた。

ところが、メニューの改定後は客離れが加速。2015年3月期の既存店客数は前期比で7%減という結果となった。こうした中、今年3月に就任した清水社長は「和民という業態に対して『安い』というイメージが消費者に根強くあり、お客様が求めるものとの間に乖離が生じた」と分析。4月に約10年ぶりとなる値下げに踏み切った経緯がある。

メニュー数拡充に動くワケ

同時に行ったメニュー数の削減は、店内オペレーションを簡素化することで、注文してからの待ち時間の短縮を図り、顧客満足度の引き上げる狙いがあった。また、従業員の負担軽減という側面も大きかったといえる。

9月以降、再びメニュー数を増やせば、店舗のオペレーションに負荷がかかり、料理の提供に時間を要する可能性もある。実際、清水社長も総会で、「商品数が少ないと満足度が失われ、多いと効率性が落ちる。コスト削減だけを進めるなら商品数を減らせばいいが、ますます『稼ぐ力』を失いかねない」と本音を漏らす場面も見られた。

それでもメニュー数の増加に動くのは、厳しい足元の状況があるからだろう。新メニューを導入した4月、国内外食事業の既存店売上高は前年同月比で10.7%減、5月も10.8%減と苦戦。通年の既存店売上高の計画である4.5%減を下回っている。効率性をできるだけ落とさずにメニュー数を拡充し、どこまで客数と売り上げの回復を図れるか。清水社長はいっそう難しい舵取りを迫られることになりそうだ。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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